賛成が多数派になった

 内閣府が2017年に実施した「家族の法制に関する世論調査」では選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する意見が多数派を占めた。

 現在は、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗らなければならないことになっているが、「現行制度と同じように夫婦が同じ名字(姓)を名乗ることのほか、夫婦が希望する場合には、同じ名字(姓)ではなく、それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めた方がよい。」という意見がある。このような意見について、どのように思うか聞いたところ、「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」と答えた者の割合が29.3%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」と答えた者の割合が42.5%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」と答えた者の割合が24.4%となっている。(内閣府「家族の法制に関する世論調査」より引用)

 ただし、旧姓の通称使用の法制度化を回答の選択肢に加えた2021年調査ではそちらが多数派となっている。ただし、直接の利益当事者ともいえる「未婚で同居パートナーあり」層においては選択的夫婦別姓制度の導入が多数派を占めた。

 長く保守的な政治態度を示している経済界も本件に関しては選択的夫婦別姓の使用を相当明確に主張し、シンポジウムを開催したり、昨年には報告書を公開したりしているほか、直接自民党に働きかけるなど明確に導入を主張している。

選択的夫婦別姓 経団連 “早期の制度導入を” 自民会合で要請 | NHK

 経団連の例示によれば、契約や手続き、女性のキャリア構築、海外渡航などに関連して、ビジネス上の不利益がすでに現実問題として顕在化していることや、国連女性差別撤回委員会が2003年、2009年、2016年、2024年の4回にわたって是正勧告を行っていることなどを踏まえて、日本のジェンダー平等政策が国際基準に叶わない現状を懸念している。

 司法においては、2015年、21年に最高裁が夫婦同姓を合憲とする判決を下しているが、選択的夫婦別姓の合理性が判断されたわけではなく、15人の裁判官のうち4人は違憲と判断し、「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」とも記された。

夫婦同姓「不当な国家介入」 最高裁判事4人が違憲判断:朝日新聞

 政治においては、主要政党として明確に反対しているのは自民党のみであり、そのなかの保守層とむしろ少数派になりつつある。風向きは様々な分野で変わりつつあるといっても過言ではないだろう。

 与党のなかでも公明党は選択的夫婦別姓に対して、明確に肯定的な態度を取ってきた。

「夫婦別姓」導入すべき | ニュース | 公明党

 ただし、維新は「選択的夫婦別姓制度」に賛成しているとも目されがちだが、少なくともマニフェストなどでは一般的な意味での選択的夫婦別姓には「賛成していない」ことも特記しておきたい。

 維新が主張する「維新版選択的夫婦別姓制度」は、同一戸籍・同一氏の使用の維持を明記したうえで、旧姓使用に法的効力を与えるという趣旨の主張を行っているので、これは一般には旧姓の通称使用の拡大に区分される主張である。

 国民民主党は直近の躍進のきっかけとなった2024年衆院選マニフェストにおいては「選択的夫婦別姓制度を導入します。多様な家族のあり方を受け入れる社会をめざします」と記すなど明確に選択的夫婦別姓制度に賛成したにもかかわらず、最近の主張はやや後ろ向きに感じられる。産経新聞はその変化を「支持層の変化(保守層の支持拡大)」と分析している。

選択的夫婦別姓で国民民主と連合にすきま風 玉木代表「立法事実を確認する必要がある」  

 国会前半戦において野党第一党でありながら存在感が乏しかった立憲民主党は選択的夫婦別姓制度にかけているはずだ。都議選や参院選も近づくだけになおさらだ。

 もし立憲民主党が国民民主党と維新、公明党までまとめることができるなら、政局も見えてくるかもしれない。