長期・安定的な解決策が求められている

 パナマは中国の巨大経済圏構想である「一帯一路」から離脱する決定をしたし、デンマークのグリーンランド自治領では米国との良好な関係構築を求める声が高まっているとされるなど、すでに成功しつつある面も見られる。

 ロシアの侵攻で始まったウクライナ戦争であるにもかかわらず、トランプ大統領は一方的にゼレンスキー大統領を「独裁者」呼ばわりし、第3次世界大戦の火付け役ででもあるかのように批判した。

 衝撃的であった。

 こうしたことからトランプ・ゼレンスキー会談は決裂したが、米国の協力なくしてはウクライナの明日はない。

 そこでウクライナはどんなに厳しい条件だろうと、国家をなくすよりはマシと再考して譲歩する以外にない。

 まさしくトランプ外交の真髄かもしれないが、商取引ではなく国家の存亡に関わる問題であるだけに将来の懸念事項である。

 ゼレンスキー大統領はウクライナ国家の元首であると同時に政治的責任者だ。

 トランプ氏は簡単にディールというが、領土の割譲や資源の半永久的な譲渡などに対して議論するのは当然であろう。

 また、トランプ氏の要求が戦争に対する認識違いからきているならば、そうした根本的なことを指摘し、ウクライナの主権擁護を主張することは一国の元首としてしごく当然のことである。

 米国側には反論に聞こえたのかもしれないが、米国の副大統領が「感謝の気持ちが足りない」などと跳ね返すことの方が礼儀を失している。

 実際のところ、ゼレンスキー氏は感謝の気持ちを何度も表明した上で、米国がウクライナの主権を蔑ろにしているように思える不当な要求に断固反論したのであり、国家元首の立場であることを理解しようとしない米国の傲慢さだけが目立った。

 ガザ地域が戦争で廃墟と化していることは言うまでもない。

 だからと言ってこれまでの住民を追い出して米国が当分の間管理するというが、関係者と協議した状況などは見当たらないとされる。

 ロシアとウクライナ戦争の終結や中東の安定をいち早く確保して米国の力を対中国に集結する思いは強く感じられても、当事者等が排除されたのでは長期に亘る安定的な解決とはなり難いのではないだろうか。