「おー、いいぞ。やるやる」

 その日アメリカからジェットスーツを背負ったパイロットが空中飛行するイベントがある。それに笹川氏が参加するということだった。

 会場に現れた笹川氏は終始ニコニコの好々爺。白い口ひげに高級なスーツ。やや小柄で小太りの炯々たる目。この目で見た笹川氏の第一印象は偏見なしで「曲者」。油断大敵、握手をすると腕ごと盗られかねないような凄みを感じた。

好々爺の顔の裏にもう一つの顔あり(写真:橋本 昇)

 あらかた撮影を終えた時、頭に一つの絵が浮かんだ。彼が母親を背負って神社の階段を登るCMの映像だ。

笹川良一、母を背負いしの像(写真:橋本 昇)

 そこで「笹川さん、ついでにジェットスーツを背負ってくださいませんか。ヘルメットも被って」とリクエストすると「おー! いいぞ。やるやる」と笑いながら力んだ。

 さすがドン!太っ腹、いや、案外洒落の分かる人間なのかもしれない。

ジェットスーツにヘルメットで得意のポーズでカメラを見る笹川良一氏(写真:橋本 昇)