羽生結弦さんの3・11への思いとは。写真は2024年3月の「ファンタジーオンアイス」(写真:松尾/アフロスポーツ)
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
プロスケーターとして活動する羽生結弦さんが座長を務めるアイスショー「羽生結弦 notte stellata(ノッテ・ステラータ)2025」が3月7日から3日間、故郷の宮城・セキスイハイムスーパーアリーナで開催された。羽生さんらが鎮魂の舞で被災地へ祈りをささげるショーは3年連続の開催となった。今回のスペシャルゲストは狂言師・野村萬斎さん。萬斎さんの代表的な演目「MANSAIボレロ」、そして競技者として頂に立った羽生さんの代表的なプログラム「SEIMEI」で豪華なコラボレーションが実現した。
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狂言とアイスショーの融合
前半の第1部の最後に、最初のハイライトが待っていた。
萬斎さんが2011年に「鎮魂」と「再生」への思いを込めて初演した「MANSAIボレロ」が、出演者による集団演目として羽生さんたちが舞うフィギュアスケートと被災地のリンクで融合した。
暗闇と静寂に包まれた会場に大きな拍手がわく。萬斎さんが姿を見せた。リンク中央に設けられた特設舞台までゆっくりと歩みを進める。水のしずくが落ちる音が会場に響く映像が、厳かな空間を醸し出す。
宮原知子さん、鈴木明子さん、田中刑事さん、無良崇人さん、シェイリーン・ボーンさんが脇を固め、和装姿の羽生さんが袖を美しくたなびかせたりしながら舞った。舞台上の萬斎さんが狂言特有の力強い足拍子も披露し、銀盤を滑る羽生さんと動きが一体となっていく。
日本の伝統芸能と、海外で原型が生まれたフィギュアスケートという2つの芸術表現が重なり合った。クライマックスでは、萬斎さんが舞台からダイナミックに飛翔。演目が終わると、会場はたちまちスタンディングオベーションに包まれた。
萬斎さんは囲み取材で、「MANSAIボレロ」に込めた思いを明かした。
