欧州は防衛費増額へ

 トランプ政権がヨーロッパへの安全保障コミットメントを後退させている現状に鑑み、ヨーロッパは軍拡へと舵を切った。

 3月4日、ブリュッセルで、EUのフォンデアライエン委員長は、最大8000億ユーロ(125兆円)規模の資金を欧州防衛力強化のために投入する計画を発表した。「ヨーロッパ再軍備計画」である。

「ヨーロッパ再軍備計画」を発表するフォンデアライエン欧州委員会委員長(写真:ロイター/アフロ)

 具体的には、加盟国による兵器調達のために、最大1500億ユーロ(約23兆円)の融資枠を設ける。

 また、EUの財政規律を緩和する。EUには財政赤字をGDPの3%以内に、また債務残高をGDPの60%以内とするルールがあるが、異常事態が発生した場合には、この財政ルールは一時的に停止することができる。これが免責条項(escape clause)である。

 2020年3月に新型コロナウイルスの感染が拡大したときには、そうなった。今回も、まさに「異常事態」が起こっているのである。

 今回は、罰則(ペナルティー)を課されることなく、加盟国は、4年間で6500億ユーロを防衛費として追加支出できることになる。これと1500億ユーロの融資枠の合計が8000億ユーロである。