5.ウクライナ戦争を左右する電子戦情報
電子戦信号は、ウクライナ戦争でどのような場面に使用されたのか。
ロシア軍はウクライナへの侵攻と同時に、対レーダーミサイルやおとりを使って、ウクライナ軍の防空ミサイル用レーダーや監視レーダーを破壊した。
侵攻と同時に、破壊され、燃えている監視レーダーを見て、衝撃を受けたものだ。
一方、ウクライナ軍は、米国からロシアの電子戦信号情報を得て、ロシアの防空ミサイルレーダーや監視レーダーが発する電子戦信号の位置を特定し、対レーダーミサイルや対地巡航ミサイルを撃ち込み破壊している。
ロシアの防空ミサイルレーダーが破壊されているので、ウクライナの長距離自爆型無人機の石油関連施設への攻撃では、ロシアは多くを打ち漏らし、大きな被害を出している。
このように戦争になれば、中国の情報収集艦が取得した通信電子情報は、防空ミサイル用や監視用のレーダーを攻撃するために使用される。
そして、レーダーが破壊されれば、ミサイルや自爆型無人機の攻撃を防ぐことはできなくなるのだ。
6.中国が敵性国家である現実を認識すべき
通信電子情報を収集する重要性を認識している中国は、対象国やそれらの海軍演習に接近し、2010年以降、東調級815A型の情報収集艦を8隻建造して情報を収集している。
その中で、1年に1~2回は日本を1周し、南西諸島付近や台湾には頻繁に接近して来ているのである。
なぜ、中国領土内の情報収集施設だけで収集するのではなく、毎年何度も接近してきて情報収集するのか。
日米韓国が新たな通信電子機器を装備しているか、あるいは、機器の諸元を変更していないかを探り、さらに、それぞれの通信電子データや交信内容を収集しているのである。
中国は、日本と日本の領土で戦う準備を行っている敵性国家である。
西太平洋に面する国々は、中国・ロシア・北朝鮮を除き、日本に対して、敵対行為を実施してはいない。
日本は、日本に対して、実際に敵対行為を実施している国(敵性国家)とそうでない友好国とは区別して、対応すべきだろう。
友好国と敵性国家の人々を同じように処遇するのは、すぐに問題が発生することはないだろうが、十年~数十年経過するうちに、安全保障上重大な問題に発展する恐れがある。