「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」展示風景《白菜》1975年 豊田市美術館

(ライター、構成作家:川岸 徹)

身近な食材をモチーフにした親しみやすいアプリケ作品で知られる宮脇綾子。彼女の創造性を美術史の観点から見直す展覧会「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」が東京ステーションギャラリーにて開幕した。

日本を代表するアプリケ作家

「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」展示風景《ひなげし》1969年 豊田市美術館

 宮脇綾子(1905-1995)の名は美術ファンよりも、手芸愛好家にお馴染みかもしれない。野菜や果物、魚など日々の生活に身近なものをモチーフに、布地に別の布を貼り合わせて、絵や模様を施していく。すなわち「アプリケ」の手法を用いて、宮脇は心がほっこりするあたたかみあふれる作品を作り続けた。

 1905年、東京・田端で生まれた宮脇綾子。文通をきっかけに名古屋市在住の洋画家・宮脇晴(1902-85)と知り合い、結婚。それから終生、名古屋で暮らし続けた。アプリケの創作を始めたのは1945年、40歳の時。終戦を迎えた際に、「このまま何もせずに死んでしまってはつまらない」と考え、好きだった縫い物の技術を活かせる「アプリケ」を選んだのだという。

 宮脇が作るアプリケは人々の心をとらえ、やがて彼女はアプリケ作家の第一人者として知られるようになった。1960年にアプリケ教室「アップリケ綾の会」を主宰。1983年にはテレビ番組「徹子の部屋」にも出演した。1991年、86歳の時には米国・ワシントン女性芸術美術館で個展「AYAKO MIYAWAKI―The Art of Japanese Appliqué」が開催されている。