受託生産企業に輸出管理強化要請

 2025年1月15日には、半導体の受託生産(ファウンドリー)企業などに先端半導体の輸出管理強化を求めると発表した。これに先立つ2024年12月、米政府が台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子などの主要ファウンドリーに制限事項を通知する書簡を送ったと報じられていた。そこには、「先進的な米国製半導体製造技術を用いて製造された半導体や、特定の性能基準に達する半導体を中国に輸出するためには、ライセンスを申請する必要がある」と書かれていた。

 こうしたファウンドリーが絡む対中輸出規制を巡っては、かねて「中国が、米国から直接入手できない高度なAI半導体を購入するための抜け道がある」と言われていた。

 2024年には、TSMCが製造した米国技術に基づくコア回路が中国・華為技術(ファーウェイ)のAI用半導体に組み込まれていたことが分かり、中国への技術移転を阻止しようとする試みの難しさが改めて浮き彫りになったと指摘された。ファーウェイは第1次トランプ政権時代の2019年から、米政府の禁輸措置対象になっている。

 WSJによれば、今回新たに中国・半導体設計会社・算能科技(Sophgo Technologies)やシンガポール・パワーエアー(PowerAIR)もエンティティ・リストに加えられた。TSMCの内部調査の結果、何らかの形でTSMCの技術がこの2社を介して、ファーウェイに流出したことが分かったという。

第2次トランプ政権、バイデン前政権と見解一致

 バイデン前政権は、2024年12月初旬にも、中国への輸出を制限する規制を発表した。こちらは、AI向けのHBM(広帯域メモリー)の中国向け販売を制限するとともに、中国が利用できる半導体製造装置の範囲を狭めるというものだった。これもファーウェイなどの中国企業が利用できる抜け道をふさぐ狙いがある。

 英ロイター通信は、第2次トランプ政権がこれらの新規制をどのように施行するかは不明としながらも、いずれも中国からの競争上の脅威に関して同じ見解を持つ政権であることに変わりはないと報じている。