大使館、総領事館のチェックには限界

 トランプ第1期政権は2020年1月、米大使館、領事館でのビザ査証業務の厳格化を徹底するよう大統領令を発布したが、個々の担当官の判断だけに頼る取締りには限界があった。

 議会でも何度か「出産観光」を禁止する法案が審議されたが、ネックは「出生地主義」だった。

US issues new rules restricting travel by pregnant foreigners, fearing the use of ‘birth tourism’ | CNN Politics

「現行の法律では、妊婦の観光目的ビザを全面禁止することはできず、申請された場合、出産費、滞在費、保険などを確保していれば許可せざるを得ない」(米国務省関係者)

 その後、「出産観光」は米国本土では下火になったが、今でもグアムやサイパンなど米自治領には韓国人妊婦たちが群がっているという。

 2024年11月、グアムで帝王切開で出産した韓国人女性が出産後に死亡した事件が韓国メディアで騒がれている。

Korean woman dies after C-section while on 'maternity tourism' trip to Guam: Report)

 トランプ氏は、第2期政権ではこの「出産観光」を完全に撲滅する意欲に燃えているという。

 そのためには「元凶」である憲法修正第14条の改正がどうしても必要だ。

レーガン任命の判事が「明確な違憲だ」

 だが、トランプ氏が「出生地主義」の撤廃を発令した直後、22州の司法長官が異議を申し立てた。

 ワシントン州のニコラス・ブラウン司法長官はこれに対し、「国籍付与の規定は米国憲法で定められており、大統領に変える権限はない」として1月21日、差し止めを求めて訴えた。

 これを受けて、ワシントン州シアトル地区連邦地裁のジョン・コフェナー判事は、ブラウン長官とトランプ側双方の意見を聞いたうえで、大統領令の14日間の一時差し止めを命じた。

 同判事は法廷でこう発言した。

「大統領令は明白に違憲だ。判事を40年以上務めてきたキャリアのなかで、これほど明確に違憲とされるケースは記憶にない」

 同判事は1981年、ロナルド・レーガン第40代大統領に指名された保守派判事である。

Judge John C. Coughenour Biography | Western District of Washington | United States District Court

 トランプ氏は「控訴する」と息巻いている。