『トリリオンゲーム(1)』(ビックコミックス)原作: 稲垣理一郎 作画: 池上遼一 小学館
(文星芸術大学非常勤講師:石川 展光)
最強のコンビが織りなす超話題作
『トリリオンゲーム』(既刊9巻)は、『ビックコミックスペリオール』(小学館)で2021年から連載中の漫画である。2023年にTBS系列でテレビドラマ化され、2024年にはアニメ化(マッドハウス)もされた。そして今年の2月14日には最新刊発売と劇場版ドラマの公開が予定されている超話題作である。
主人公、ハルとガクの二人が巨万の富(トリリオン=1兆ドル)を手に入れるために、常識もコンプライアンスもかなぐり捨てて大暴れする痛快活劇だ。
ハルは天才的なコミュ力と破壊的な行動力を兼ね備えた快男児。相棒のガクはオタク気質で臆病だが超優秀なハッカーである。全体的な物語としてはこのバディが、「ありえない危機」を「ありえないやり方」で切り抜けていく展開となる。
原作は『アイシールド21』や『Dr.STONE』(どちらも集英社)を手がけた稲垣理一郎。そして作画は劇画界のレジェンド、池上遼一である。これだけで品質保証は間違いない最強の「バディ」である。
原作者の稲垣は本作でもヒットメーカーとしての辣腕を振るっていて、テンポよく物語は進んでいく。巻数を重ねるごとに、わらしべ長者式に事業が拡大していき、クセの強いキャラクターもどんどん登場する。
特に注目したいのは、毎回単行本の冒頭に「億万長者となった現在のガクの姿」が描かれる点だ。これはつまり、現段階(9巻)までの本編は、全てガクの回想という設定なのである。そして最大の謎が、なぜかハルは失踪しているものとしてガクが語っていることだ。新刊が出るたびに冒頭の物語もじわじわと進んでいくのだが、これはリアルタイムで単行本を追っているからこそ楽しめるポイントである。
原作者の稲垣は本来、漫画家として自立できるほどの実力者である。しかし本人は「僕は少年漫画の絵は下手くそです。ネームに集中し、絵は上手い人に。その方が絶対いい物ができる!」(2007年4月17日ブログ記事)という発言をしている。
そして本作の「絵が上手い人」というのが、まさにトリリオンに桁違いなのである。
