(英エコノミスト誌 2025年1月18日号)

インドのモディ首相がロシアを訪問し、プーチン氏と抱擁した2024年7月9日はタイミングとしては最悪だった(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

クレムリンから石油と武器を総額170億ドル購入する新規の取引と、その背後にある賭けとは。

 ウクライナで戦争が始まってからずっと、西側諸国はインドに対し、ロシアと距離を置くよう働きかけてきた。

 インドは一貫してその要請を拒み続けている。

 インド政府高官はこの点について――多くの場合はとげとげしいやりとりで――クレムリンは数十年来の親友だと述べている。

 なるほど、過去20年ほどでインドが輸入した武器のうち約65%はロシアのものだ。

 また、インドの最大のライバルである中国がロシアと結びつきを強めており、その影響を打ち消すためにもロシアとの関係を育む必要があると高官たちは語っている。

 西側の政府高官や観測筋は、インドが商業や軍事の面で米国やその同盟国への依存度をますます高めていくうちに、この力学も変化するだろうと結論づけた。

 そこで各国政府はインドに強硬に迫るのではなく、経済面の結びつきを強化したり先進的な防衛技術の供与を増やしたりすることにした。

 それゆえ、米国が戦闘機のジェットエンジンをインド国内で共同生産する取引を2023年に結ぶなど、いくつかの合意がまとまっていった。

インドが考える将来の対ロ関係

 しかし、最近の展開から明らかなように、そのインドが考えるロシアとの将来の関係は西側の想定とはかなり異なっている。

 まず、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2025年の早い時期にインドを訪問するとのニュースが伝えられた。

 その数日後の12月8日にはインドのラジナート・シン国防相がモスクワを訪れ、40億ドルの早期警戒レーダーシステムの購入など新たな取引について話し合った。

 その直後には、年間およそ130億ドルという両国間で過去最大のエネルギー供給契約も締結された。

 ロシアの国営石油会社ロスネフチが日量およそ50万バレルの原油をインドの民間製油会社リライアンスに10年間提供するという内容だ。

 西側がロシア産原油の価格に1バレル60ドルの上限を設定したことを受け、インドはここ数年、ロシア産の石油を盛んに購入しており、今では中国に次ぐ世界第2位の石油輸入国になった(図1参照)。

図1

 2021年にはインドが輸入する石油のうちロシア産は2%を占めるにすぎなかったが、2024年4~10月期ではその割合が40%近くに上る。

 格付け会社ICRAの推計によれば、ロシア産原油を割安な価格で買ってきたインドは、ウクライナの戦争が始まって以降少なくとも130億ドル節約できているという。