トランプの圧力が中国の反米感情を刺激

 4期目に入るための有効手段が見当たらない習近平は鬱々とした日々を過ごしていたが、ここに来て一縷の光明が見え始めた。それはトランプが再選されたことだ。

 第二次トランプ政権がどのようなものになるのか今ひとつハッキリしないが、中国に対して強硬な姿勢をとることだけは確かである。彼は中国に対して強硬な発言をする人物を閣僚に選んでいる。

 習近平はこれをチャンスと捉えているはずである。それはトランプが中国に対して強硬な姿勢を貫けば貫くほど、中国国内で反米感情が高まるからだ。

 トランプは関税などで中国に圧力を加えてくるのは間違いない。また領土領海問題で対立しているフィリピンなどを支援するが、それは中国の反米感情を刺激する。反米感情の高まりをうまく利用したい。習近平は密かにそう考えているであろう。

G20大阪サミットに際して首脳会談を行った米国のトランプ大統領(当時)と中国の習近平国家主席(資料写真、2019年12月13日、写真:AP/アフロ)

 一般に中国人の米国に対する感情は悪いものではない。アヘン戦争を起こしたのは英国である。清朝から中華民国の時代に中国を侵略し租界を作ったのはヨーロッパ諸国であった。その後に中国を侵略したのは日本だ。その時分、米国はアジアに興味がなかった。中国を侵略することもなかった。その一方で第二次世界大戦において米国は蒋介石政府を支援した。抗日戦を行う毛沢東にも好意的だった。