キムって誰だ?

 井上選手が、グッドマン選手から挑発的な発言を受けた一戦は、相手のTJ・ドヘニー選手(アイルランド)が終始、消極的なボクシングを展開していた。井上選手がTKO勝利を飾ったが、相手が腰を押さえて戦意を喪失したために消化不良。会場の熱も高まらない中での終戦だった。

 こうした背景から、井上選手は「(対戦相手が)塩試合をしたからさえなくなった」と強調し、グッドマン選手には好戦的な試合を臨んでいた。

24年9月のドヘニー戦は、同選手(右)の消極的な試合運びで、グッドマン選手から「さえない」と指摘される羽目に(写真:山口フィニート裕朗/アフロ)

 ボクシングのKOシーンは、互いが拳を交えた攻防の中から相手が前に出る力も利用して生まれることが多い。一方的な防御に徹する消極的な相手を打ち崩すのは、逆に難しく、試合展開も停滞して内容もつまらなくなる。

 それゆえに、井上選手が求めるのは、自らを倒すためにリスクを覚悟できる挑戦者でもあるのだ。

 19戦無敗のグッドマン選手にも積極的なファイトを求めたが、キム選手ははたしてどうか。

 キム選手は日本人選手相手に過去7戦全勝しており、「トラブルメーカー」というリングネームを持つ。そんなキム選手に対し、ネットメディア「THE DIGEST」は、英ボクシング専門サイト「Boxing News24」の「ファンが抱く疑問は、キム・イェジョンという名前をこれまで聞いたことがないということ以外に、WBOランク11位ながらWBC、WBA、IBFの認定団体でいずれもトップ15圏外にとどまっている。にもかかわらず、イノウエのスーパーバンタム級の4つの世界タイトルを争うことが許されるのか?ということだ」という記事を紹介する。

 また、対戦相手の変更後もチケットの払い戻しはなく、インターネット上に批判的な声も上がるが、井上選手陣営からすれば、とばっちりでしかない。