このように、米国、日本、韓国が、先端プロセスのキャパシティを増やすことができないとなると、結局、台湾と中国がシェアを減らす理由がない。そのため、筆者は、2027年の先端キャパシティは、台湾が77%、中国が10%と、どちらも微増すると予測した。ということは、2023年も、2027年も、先端プロセスの地域別キャパシティは、TSMCを擁する台湾が圧倒的であるということだ。

トランプ政権が台湾有事を誘発?

 筆者は2023年4月20日に、『半導体有事』(文春新書)を出版した(図4)。その本の中で、中国が台湾に軍事侵攻する危険性について触れた。しかし、そのような台湾有事を現実的なものとして考える人は少なかったように思う。むしろ、「そんな台湾有事など起こりえない」と批判的な意見が多かったと感じた。

図4 『半導体有事』(文春新書、2023年4月)

 しかし、1月20日に、第2次トランプ政権が発足することによって、事態は大きく変わる可能性がある。トランプ氏は中国製品に60%の関税を、そのほかの国・地域に一律10%の関税を課すほか、カナダとメキシコからの輸入に25%の関税を課す方針を打ち出しているからだ(ロイター、2025年1月8日)。

 このトランプ氏の発言が、本気か、はったりかは、筆者には判断できない。しかし、もし、本当に中国に60%の関税を課したら、中国は猛反発するだろう。そしてもしかしたら、台湾に軍事侵攻して、TSMCを乗っ取ることもないとは言えないのではないか。

 このような台湾有事が起きた場合、米国はどう対処するのか?

台湾有事が起きた場合の製造キャパシティ

 まず、台湾有事が起きた場合、半導体の製造キャパシティの地域別比率は図5のようになる。

図5 台湾有事が起きた場合の成熟プロセスと先端プロセスの製造キャパシテイの地域別比率
出所:Ken Kuo、「2025年世界ファウンドリー市場の予測と分析」、トレンドフォース、2024年12月12日のセミナーの資料をを基に筆者作成
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 成熟プロセスでは、台湾を制圧した中国の合計キャパシティ比率が83%になる。また、先端プロセスでは、TSMCを支配した中国の合計キャパシティ比率が87%になる。要するに、台湾を支配下に置いた中国は、成熟プロセスでも、先端プロセスでも、圧倒的なキャパシティを有するわけだ。

 そして米国は、このような事態を許すことができない。では、米国はどうするのか?