これが2027年になると、トレンドフォースは、台湾が54%にシェアを減らす一方で、米国が2倍以上の21%に増大し、日本が新たに4%を獲得するが、韓国および中国は、それぞれ、微減の9%および6%と予測している。

 米国が製造キャパシティを2倍以上に増やすのは、TSMCアリゾナ工場が立ち上がること、および米CHIPS法により補助金を獲得したインテルの新工場が建設されることによるものと思われる。また、日本が4%のシェアを占めるのは、TSMC熊本工場が16~12nmの半導体を製造することによるものだろう。

 しかし、筆者は、このトレンドフォースによる2027年の予測には大きな違和感を覚える。そこで、以下では、筆者の予測を論じてみたい。

先端プロセスのキャパシティの予測

 まず、米国比率は、2023年の9%から増えるどころか、減るのではないだろうか? その第1の根拠は、インテルが企業存亡の危機に陥っており、新たな半導体工場の建設が困難になっているからである。また第2の根拠は、TSMCアリゾナ工場においては、台湾人と米国人の間に、言葉の壁かつ技術の壁があるため、量産立ち上げが遅れに遅れているからだ。

 具体的には、2024年に4nmの半導体の量産を開始する予定だったTSMCアリゾナの第1工場は、台湾人と米国人の確執により予定が何度も遅延し、今年2025年にずれ込んでいる。また、3nmおよび2nmを量産するアリゾナ第2工場はその時期が2028年以降に遅延しており、2nm以降の第3工場に至っては2030年末という「目安」しか発表されていない。

 このような言葉の壁と技術の壁があるのは、日本のTSMC熊本工場でも事態は同じである。熊本第1工場では、28/22nm~16/12nmの半導体を作ることになっており、TSMCの広報担当者は2024年12月27日、「全てのプロセス認証を完了した後、12月に計画通り量産に入った」と答えたという(日経クロステック)。

 しかし今後も順調に28/22nm~16/12nmの半導体が量産されるかどうかについては疑問がある。今のところ、TSMC熊本工場は計画通りに進んでいるように見えるが、本来1700人必要な社員は1000人しか集まっておらず、700人不足している。また、1000人の社員の内の300人の台湾人と700人の日本人の間には、言語の壁と技術の壁がある。つまり、台湾人と日本人はコミュニケーションを取るのが難しく、40nmまでしか知らない日本人はほとんど戦力にならないのである。したがって筆者は、熊本工場が、いつなんどき機能不全に陥るか分からないと考えている。このような事態を考慮して、2027年の日本のシェアは4%ではなく、2%と推測した。

 さらに、韓国も、サムスン電子のファウンドリビジネスの不調を考えて、9%から5%にシェアを引き下げた。サムスン電子は、TSMCよりも早く、3nmにGAAのトランジスタを採用したが、この量産に手こずっており、歩留りが20%程度に低迷している模様である。その結果、サムスン電子のスマホGalaxy用のプロセッサExynosをTSMCに生産委託するかもしれないというニュースが報道されている(GAZLOG、2024年11月15日)。これが事実なら、サムスン電子のファウンドリは“もう終わっている”。