「地獄」からの生還

 5000mで13分09秒45の日本人学生最高記録、10000mで日本人学生歴代3位の27分28秒50を持つ佐藤。彼のポテンシャルを考えれば、7区での快走は当たり前に思えるかもしれない。

 しかし、今回の佐藤は故障に苦しみ、「絶望」を味わっていた。昨年4月に恥骨の疲労骨折が判明。6月に完治して練習を再開するも、9月に再び、恥骨を痛めた。「競技復帰できるのか」と佐藤は苦しんだという。

「絶望しかなくて、地獄みたいでした。でも同じ個所を痛めたことで、自分の弱い部分がわかりましたし、自分のカラダを見つめ直すいい機会になったなと思います」

 そして10月半ばぐらいから本格的な練習を再開して、コンディション的には「70%」だった。昨年3月に米国で行われたThe TEN(10000m27分34秒66)以来、約10か月ぶりのレースに怪物・佐藤も「めちゃくちゃ緊張した」という。それでも「自分の力通りで走れば区間記録を1分は更新できると思っていた」というから驚きだ。

「20kmも走れるのかなという不安もあったんですが、いざ走ってみれば余裕を持って走ることができましたね。本当は後半にペースを上げたかったんですけど、18kmくらいからちょっと落ちてしまったので、練習不足、距離走不足を感じました。それでも、ある程度まとめて走れたのは良かったなと思います」