世界選手権への思い

 男子の優勝者は鍵山。上位の選手の中にミスが相次ぐ中、圧巻の演技をみせた。

 フィニッシュ直後は氷上に大の字になった。

「1回、(宇野)昌磨さんのを見て、最終滑走で良い演技をしたらやってみたかったです。(2位の中田)璃士君に先にやられちゃったんですけど、やってみました。気持ちよかったです」

 オリンピックや世界選手権などで数々の実績を残してきた鍵山だが、全日本選手権は初めての優勝。

「やっぱり全日本は特別です」

 と喜ぶのは、コーチである父・正和氏の、鍵山本人を上回るほど喜ぶ姿にもあっただろう。

 全日本選手権では7位に終わったが、グランプリファイナルで3位と表彰台に上がったことが決め手となり、佐藤は初めて世界選手権代表に選ばれた。

 ジャンプでミスが相次いだフリーの前は緊張と不安に駆られていたという。

「練習のときからずっと優勝が頭にあったので、それも影響しているかなと思います」

 結果を求めたことからくる、重圧があった。

 うまくいかなかったから、こう語る。

「この経験をしたから、世界選手権で同じ失敗はしないし、してはいけないと思います」

 もう一人の世界選手権代表は壷井。NHK杯、全日本選手権ともに3位に入った安定感が評価された。

「実力的に世界選手権の代表にふさわしいかどうかは自分の中で整理できていないところもありますけど、選ばれたからには自分ができるすべての練習をスケートに捧げたいです」

 壷井は今、神戸大学4年生。

「スケート、大学、食事、睡眠。この4つ以外はなにもしていないみたいな日々です」

 とストイックに過ごし、学業とフィギュアスケートを両立させてきた。でもここからが勝負のときだと自覚するから休学という選択をする。

「ただ自分の実力を上げていきたいというひとことに尽きます」。

 代表に選ばれた6人は、世界選手権への思いを尋ねられ、こう答えた。

「いちばんこうであってほしいと思うのは個人と団体の金メダル。そこを目指していきたいです。ここから1試合1試合重要になってくるので大事にして頑張っていけたら」(坂本)

「まず選考していただけるよう1つ1つ大事に実力を積み重ねて、毎日努力を怠らないようにしたいです。ミラノでは納得のいく演技をそろえるのが理想です。それまでの1つ1つを丁寧にやっていきたいです」(千葉)

「この1年間、復帰してから昨日の演技をまでに変わったななと思うことがあって、次の1年もたくさん変わると思うので、今シーズンの結果に満足することなく、新しい挑戦をしながら自分の強みをみつけて強くしていくのが大事かなと思っています」(樋口)

「ミラノに出場できたならば、団体戦で金メダル、個人戦でも北京よりすばらしい演技で金メダルが目標です。そのためには一歩ずつ頑張りたいです」(鍵山)

「まだ足りないことがたくさんあります。出場できたならば、いい結果を残せるようにしたいです。目先を1つ1つ頑張ることが大事だと思っています」(佐藤)

「選ばれることがスケート人生のいちばんの目標です。まずは世界選手権で実力をアピールして、選んでいただけたら結果を残せるんだということを示したいです」(壷井)

 それぞれの思いをぶつけ、喜びも悔しさもそれぞれに味わった全日本選手権を経て、その経験を糧に、これからを見据え大舞台に挑む。