社会保障も介護も破綻寸前
まずは社会保障支出の膨張です。
内閣官房の資料によると、2021年度の社会保障給付費(予算ベース)は、年金58.5兆円、医療40.7兆円、福祉その他30.5兆円で、総額129.6兆円でした。それが3年後の2024年度には総額137.8兆円に増加。対GDP比も20%を超すことが常態化してきました。2025年度には149.8兆円、さらに2040年度には169兆円になると見込まれています。
こうした給付の増大を現役世代による保険料、さらには税収や借金(国債)で賄う形になっています。「保険料のみでは負担が現役世代に集中してしまうため、税金や借金も充てています。このうちの多くは借金に頼っており、私たちの子や孫の世代に負担を先送りしている状況」(財務省)が、今後さらに深刻化することは間違いありません。
介護分野も深刻です。
経済産業省の資料によると、2020年に725万人だった要介護・要支援の認定者は、2025年には815万人になる見通しとなりました。5年間で90万人も増加する計算です。認定者はさらに増え続け、2040年の予測は988万人。ほぼ1000万人が要介護者になる見込みです。また、認知症患者も2025年には675万〜730万人に達すると予測されています。
これに対し、介護職員の数は圧倒的に足りません。厚生労働省の介護保険事業計画によると、2025年に必要とされる介護職員は約243万人で、不足は約32万人。2040年には必要な職員は約280万人にまで増える一方、約69万人が不足する見通しです。
介護サービスの中でも、とくに人手不足が深刻なのは訪問介護の職員です。
厚労省のまとめでは、2023年度の有効求人倍率は14.14倍で、全職種平均の1.31倍を大きく上回りました。事業者が必要とする人員14人に対し、求職者が1人しかいない状況です。
不人気の理由は明確で、責任や労働の重さに比べて賃金が低いこと。平均給与月額は約26万円(就労2年未満)で、全産業の平均より8万円前後も低くなっています。しかも介護職員そのものの高齢化も進んでおり、全体の3割近くが65歳以上の高齢者という状態です。