メイド・イン・ジャパンの実力は?
こうした状況から、イマーシブ展覧会は「海外に押されている」との印象を受けるが、日本のクリエーターも気を吐いている。12月21日に東京・天王洲の寺田倉庫G1ビルで始まった「動き出す浮世絵展」は日本生まれのイマーシブ展覧会。制作を担当したのは名古屋・東京を拠点とするデジタルクリエイティブカンパニーの株式会社一旗。同社はこれまでに「国宝 松本城天守 プロジェクションマッピング 2023-2024」をはじめ、国の名所や史跡を舞台に数々のデジタルアート作品を発表してきた。
では、一旗が作り上げた「動き出す浮世絵展」についてレビューしたい。本展はタイトル通り、浮世絵がテーマ。葛飾北斎、歌川国芳、歌川広重、喜多川歌麿、東洲斎写楽、歌川国貞といった名だたる浮世絵師の作品300点以上を素材に、3DCGアニメーションやプロジェクションマッピングの技法を用いて新たなデジタルアート作品を作り上げている。
会場は「藍」「眺」「彩」「麗」「遊」「瀧」「錦」「豪」「雅」の9つのエリアに分かれ、それぞれの空間でコンセプトの異なる映像作品を鑑賞することができる。使用されているプロジェクターの数は40台以上。株式会社一旗代表で本展のプロデュースを務める東山武明氏は「ひとつの画面を作り上げるのに複数のプロジェクターを使用。映像と映像のつなぎ目を分からないようにする“ブレンディング”にこだわりました」と話す。
そのこだわりがいかんなく発揮された「藍」エリア。画面いっぱいに、世界で“ジャパンブルー”と讃えられる藍色の美しい海が広がる。映像の制作には、さまざまな絵師の浮世絵作品をミックスして使用。葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》の大波が立ち上がる海の中を、歌川国芳《宮本武蔵の鯨退治》に登場する鯨が悠々と泳ぐ。3DCGで立体化された鯨は実物の骨格を考えて制作されたそうで、そのなめらかな動きに驚かされるばかり。映像と映像のつなぎ目など、まったく分からない。