「万全に調査」が簡単に覆されてきた電力会社の活断層への見解

 大きな地震が起きない地域ならば、この程度の備えでも良いかもしれない。しかし県庁から5km北には、活断層「宍道断層」が東西に連なっている。

 この活断層は、島根原発2号機からは約2kmしか離れていない。研究者の指摘にもかかわらず中国電力は「活断層ではない」として設計し、1989年に運転を始めた。98年になって「宍道断層は活断層で最長8km、最大M6.3の地震を起こす」と見解を変えた。県庁で記者会見した通商産業省(当時)の担当者は「実際はもっと短いが安全側に見て8km。これを超えることはない」と強調していた。

 ところが2006年、そこまで延びていないと中国電力や国が主張していた場所で活断層が見つかった。「万全に調査したと言っていたのに、こんなに簡単に覆されるのか」と、現場を見て驚いたのを覚えている(写真)。中国電力は8km、10km、22kmと延長を繰り返し、現在は39km(M7.5)と想定している*6

*6 中国電力 島根原子力発電所 基準地震動の策定について 2021年1月20日

島根原発周辺の活断層(中国電力の資料から)
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 能登半島地震の前、北陸電力が海底の音波探査データなどをもとに「最長96km。それ以上は連動しない」と予測していた活断層は、実際には約150kmも動き、北陸電力は178kmに想定を変えた*7

*7 北陸電力 志賀原子力発電所2香炉の新規制基準適合性審査体制及び審査資料の作成状況等について 2024年11月6日

 宍道断層も周辺の活断層と連動してさらに長く動き、より大きな地震を起こしても不思議ではない。

掘り起こされた宍道断層(筆者撮影)
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