(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)
奈良県が来年10月に奈良公園で、K-POPアーティストを招いて9000人の無料コンサートをやるのだという。これにかかる費用は2億7000万円。
しかしこのニュースが報じられるや、抗議電話が殺到したという。
わたしがこのニュースを知ったときの第一感は、奈良県は自分たちで奈良を壊しているな、というものだった。
奈良公園でK-POP? 県の人間が、時代や若者に媚びたのだ、という気がする。
「友好提携」という、役所の無意味なお題目
そもそもは今年2月、奈良県の山下真知事と韓国忠清南道の知事のトップ会談で決まった話だった。
すなわち、来年10月にK-POPアーティスト(たぶんグループ)を奈良に招き、奈良公園で、「日韓国交正常化60周年及び奈良県と忠清南道の友好提携15周年を記念する音楽交流イベント」を開催することで合意したのである。
例のごとく「友好提携」という、役所の無意味なお題目が掲げられてはいる。しかし実際は、なにかやりませんか、いいですねえ、K-POPでやりましょう、といった軽いノリで盛り上がったのではないか。
ついそう邪推したくもなるが、いずれにせよ、歌手の選考や手配、その他の費用などは忠清南道が負担する(現時点で、出演歌手は未定)。他方、舞台設営や会場警備などの総事業費2億7000万円は奈良県が負担することになった。
場所は奈良公園内の春日野園地と浮雲園地である。9000人規模のファンを無料招待することも決まったのである。
抗議は市民や県民からだけでなく、自民党会派の5人の県議から、「一過性で終わるのではと危惧している。県民は便益をどこまで享受できるのか」「多額の税金を使ったイベントが県民のためになるのか」などの疑問の声があがった。
県国際課は「若年層を中心に国際的な視野を広げる場にしたい。他部局や民間団体とも連携していく」「費用対効果についての批判も踏まえたうえで、単発のイベントで終わらず、県民の利益になるよう進めていきたい」などと説明した。
反対派から修正案が出され、16日の本会議での採決は割れると思われたが、賛成多数で可決された。