（4）野放し状態の性暴力チャットグループ

　ドミニク被告が集めた70人以上もの性暴行犯は、現在閉鎖されたフランスのオンラインプラットフォーム上でペリコさんレイプの募集に応じた。複数の報道によれば、2003年に設立されたこのチャット・サイトは、殺人や小児性愛、性的暴行や同性愛者に対する暴行などに関与してきた。

　今年になって創設者が逮捕され、サイトが閉鎖された際、関連した犯罪件数は2万3000件以上に上っていたという。

　欧州には現在、世界でも最も厳格とされるオンライン法がある。それにもかかわらず、このサイトが閉鎖されるまでには1年半を有し、相当のハードルがあったとされている。

　英ガーディアン紙によれば、このサイトでは不適切行為などが取り締まられておらず、仮にユーザーなどからの申し立てや法に触れる可能性によりアカウントが停止された場合でも、ユーザーはわずか10ユーロを支払えばアカウントを再開できていたという。

　ペリコさん事件の判決直前、ドイツの放送局は通信アプリ・テレグラムで、薬物などを用いて女性をレイプする方法を教え合うチャットグループの存在を調査報道で伝えた。グループによっては最大7万人ものメンバーが世界各国から参加し、妻や姉妹、母親を含む標的にどのようにして暴行を加えたかを語り合っているという。

　英テレグラフ紙によれば、こうしたグループの中には性的暴行目的で使う鎮静剤などを、ヘアケア商品と偽って売るオンラインショップなども紹介しているものもある。今回の事件で、匿名のチャットサイトにおいて性犯罪者が重要な役割を果たしている事実が再度注目された。

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　ペリコさんは法廷で、何時間もの間散歩をし、音楽を聴き、チョコレートを食べて自身を癒しているのだと話した。普通の人生を望むペリコさんが、自身への性的暴行によって「世界的な英雄」「フェミニストのアイコン」などともてはやされることは、不本意だろう。

　しかし彼女の行動が、守られるべき人間の尊厳を体現し、社会に大きな一石を投じたことも事実だ。

楠 佳那子（くすのき・かなこ）
フリー・テレビディレクター。東京出身、旧西ベルリン育ち。いまだに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中より米CNN東京支局でのインターンを経て、テレビ制作の現場に携わる。国際映像通信社・英WTN、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。