(3)薬物を使用した性的暴行対策

 前述の通り、ペリコさんは夫により長年薬物を盛られてレイプされていた。ドミニク被告の供述によれば、オンラインで知り合った看護師にこうした手法を教えられて事に及んだとされている。

 一方で、被告が関連を疑われているペリコさん以外の女性に対する強姦殺人および未遂については90年代に起き、これら事件にも何らかの薬物が使用された可能性があるという。

 ペリコさんは薬物の摂取によりしばしば記憶を失ったり大量の毛髪が抜けたり、体重が減ったりしたという。アルツハイマーか脳腫瘍などを疑い医師の診察を受けたが、いずれの可能性も否定され、原因がわからずにいた。

裁判所に詰めかけたペリコ氏の支援者たち(写真:Coust Laurent/ABACA/共同通信イメージズ 「ABACAPRESS.COM」)

 事件発覚後、自身も薬物を使用した性的暴行を受けた可能性がある娘のキャロリンさんは今年、このことについて啓蒙活動を行う団体を組織。関連して政府は11月、被害に遭った可能性のある人たちが、体内の薬物反応検査を受けやすくする措置を発表している。実現すれば、試験的に血液検査が無料で受けられるとされている。

 英インディペンデント紙は、薬物使用による性的暴行の被害者や医療従事者への情報提供のため設立された別の団体には、ペリコさんの事件後、薬物による性的暴行の症状や、薬物使用の証拠を収集する方法などについて問い合わせが殺到していると報じた。

 レイプドラッグによる性被害は、これまでも問題とされてきた。しかし、飲食店などで薬物を混入されて被害に遭うケースと異なり、ペリコさんに対する暴行は、安全であるはずの家庭内で長期にわたり続けられた。気づかずに同様の被害に遭っている人たちにとっては、医療機関によるこうした知識が今後役立つ可能性もあるだろう。