(2)「男対女」という議論では解決しない

 有罪が確定した51人の男の中には、ペリコさんに対する性的暴行について、本人の同意がなかったとは知らなかった、もしくは、ドミニク被告によって強制されたなどと主張している者もいる。後述するが、男たちはドミニク被告とオンラインプラットフォームを通じて募集され、ペリコさんと夫の「ゲーム」に参加したものとされている。

 しかし、ドミニク被告が使っていたフォーラム名は「彼女の知らないところで」というあからさまなものだ。男たちがペリコさんを強姦した際、彼女は意識のない状態でもあり、この期に及んで苦しい言い訳だ。

 男たちの年齢は20〜70代と幅広く、職業も消防士や建設業、スーパーの店員や看護師など多岐にわたる。多くが妻帯者であり、子供や孫までいるものもいた。

共犯者の名前を書いたパネルを並べ抗議する人々(写真:Marc Asensio/NurPhoto/共同通信イメージズ 「NurPhoto」)

 一番若い被告(犯行当時23)は、自分の娘が生まれた日にペリコさんをレイプしていたため、出産立ち会いに遅れたという。中には、ドミニク被告の所業に触発され、自身の妻を眠らせてレイプし、ドミニク被告も行為に「招待」した男(63)もいた。HIV感染していた男(63)に至っては、レイプの際避妊具を拒否した。

 ペリコさんが唯一面識があったのは、隣に暮らす住民(43)だった。

 犯人らに対する怒りはすさまじく、オンライン上には「意識なく横たわる妻と行為に及んだ男たちにも、オンライン上でこうした投稿を見ても通報すらしなかった何千もの男たちにも非がある」など、男性による性差別を糾弾する言葉であふれている。男性には、こうした性的暴行に対する認識があまりに低すぎるのではないかという議論だろう。

 事件があった村の村長がBBCの取材に対し「誰も死んでいないのだから大した事件ではない」と能天気に2回も言い放って謝罪に追い込まれたことには、確かに頭を抱えたくなる。

 しかし、この事例を「男対女」という構図で議論することは、性犯罪撲滅には逆効果の側面もあるだろう。すべての男性が性犯罪を犯すわけではなく、ジャニー喜多川による性的虐待に見られるように、男性も被害者となり得る。

 ペリコさんは判決後「男女が互いにリスペクトしあって共存する社会」を望んだ。性犯罪をなくすために、男性を敵視するのではなく同じ目的に向かうパートナーとして呼びかける姿勢も重要であると考えられる。