“忠臣”の中銀総裁にインフレ高進の責任をなすりつける
インフレ高進について、プーチンは記者会見で「ロシア中央銀行のエルビラ・ナビウリナ総裁と話したが、インフレ率は今年の累計で約9.2〜9.3%に達している。しかしインフレ率を差し引いた実質的な給与の増加は9%。来年の経済成長率も2~2.5%を見込んでいる」と強弁した。
インフレ高進の原因について「単純に消費量に比べて生産量が伸びていない。一部の製品が世界市場で割高になっている。中銀はもっと効率的に、もっと早い段階で利上げ以外の手段を使うことができたはずだと考える専門家もいる」と“忠臣”ナビウリナ総裁に責任をなすりつけた。
ロシア中銀は12月20日、23%以上への利上げを予想していた市場に反して主要政策金利を21%に据え置いた。2桁のインフレと急激なルーブル安が予想される中で「驚きの決定」と英紙フィナンシャル・タイムズ(同日付)は報じている。
24時間3交代でフル回転する国防産業に予算が湯水のように注ぎ込まれる。同紙によると人手不足で非熟練労働者の賃金は今年上半期に45%も上昇。プーチンはまだ持ちこたえられるかもしれないが、若者は戦場で命を落とし、資源と軍需産業頼みの経済は破滅へと近づいている。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。