北極の氷山 写真/GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

(白石 拓:作家・サイエンスライター)

北極振動がもたらす今冬の厳しい寒さ

 2024年12月の第2週に強い寒波が日本列島に到来し、10日は各地で今冬いちばんの冷え込みになりました。一気に真冬の寒さに突入しましたね。この寒さの原因として、前回(第4回)紹介したラニーニャ現象が顕著になってきたことに加え、北極振動が重なったことが挙げられます。

 いかにも厳しい寒気に襲われそうな名称の「北極振動」とは、北半球における気圧変動現象の一種です。北極域と中緯度域において、一方の気圧が平年より高くなったら他方が平年より低くなるという、シーソーのような対比が生じる現象が北極振動です。

 北極振動には正の状態と負の状態がありますが、振動といっても周期的にくり返されるわけではなく、どちらかの状態が時折生じます。正の状態とは北極域の気圧が平年より低く、中緯度域の気圧が平年より高くなる場合をいいます。負の状態はこれとは逆に、北極域の気圧が平年より高く、中緯度域の気圧は平年より低くなります。

 北極振動は夏よりも冬に現れ、負の状態のときに日本は寒波に襲われます。気圧の高い北極域の寒気が気圧の低い中緯度地域に流れ込みやすくなるからです。そして、北極振動が負に振れると、その状態は数週間から1か月程度持続しますので、多少のゆらぎはあるとしても、12月中旬から本格的な冬に突入し、しばらく寒さが続くと考えられます。もし、北極振動が正の状態に転じたら、寒気が北に押し上げられて暖冬になるのですが……。

【図1:正と負の北極振動】 図の青色・赤色は気温ではなく、平年と比較した気圧の高低を示していることに注意。北極振動が負の状態のとき、日本列島は平年より気圧が低く、北極域の寒気が流れ込みやすくなる 出典:気象庁「異常気象の発生要因」パンフレット