フォルクスワーゲンも罹患、深刻化するドイツ経済の本当の病巣
ドイツの景気には、残念ながら、けん引役が見当たらない。本来なら景気のドライバーとなる輸出は、人件費高や原材料高で競争力を失っている。それに、主力の市場である米国は、ドナルド・トランプ新大統領の下で保護主義の性格を強める。中国市場でも、景気低迷と民族系企業の勃興でドイツ企業の収益率が低下している。
輸出が不調であれば、内需、特に個人消費が圧迫される。業績の悪化を受けて、ドイツの大企業は続々とリストラ計画を発表している。世界最大の完成車メーカーであるフォルクスワーゲンがドイツ国内の工場を閉鎖することは日本でも衝撃的に報じられたが、そうでもしない限り、フォルクスワーゲンさえ体力が持たない。
ミクロ的には人口動態に伴って熟練労働者の不足が深刻なドイツ経済だが、マクロ的には過剰な雇用を抱えている。特に2022年以降に鮮明となっているスタグフレーション(景気停滞と物価高進の併存)の局面で、ドイツの雇用者数と実質GDPの動きはズレており、雇用が余剰となるかたちで「ワニの口」が広がっていることが確認できる(図表1)。
【図表1 ドイツの雇用と景気】
つまり、ドイツ経済は身の丈以上の雇用を抱えている状況にあるが、労働界はその現実を受け入れようとせず、ストライキにまい進する。フォルクスワーゲンと金属産業労働組合IGメタルは12月9日に4回目の団体交渉を行ったが、それに伴って実施された警告ストライキに全国で10万人以上の労働者が参加したと報じられている。
いずれにせよ、雇用か賃金のいずれか、あるいはその両方を削減しなければ、ドイツの企業は持たない状況にある。ゆえに、雇用・所得情勢の悪化は免れず、個人消費や住宅投資も低迷が予想される。
こうした状況に鑑み、ドイツの主要な経済研究所も、2025年の経済はゼロ成長かマイナス成長を免れないという見方を相次いで示すようになった。
さらに産業空洞化だ。