米空母ロナルド・レーガンに課せられた使命

 ペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問に対抗する前掲の2022年演習は、中国が警告を発した後に演習が開始された。

 今回の演習は中国が予告なく開始し、後から実施を明らかにしたところに大きな違いがある。

 しかし、米軍はそれを見越して空母ロナルド・レーガンがフィリピン海で活動し、南シナ海でオランダ海軍との二国間演習を実施したと見ることができよう。

 ロシアのウクライナ侵攻を数か月前に予見した米国の情報優越によるものと考えて間違いなかろう。

 第7艦隊の発表によると、南シナ海での共同作戦に参加した部隊は、米海軍の沿海域戦闘艦「USSモービル(LCS-26)」、貨物弾薬補給艦「USNSウォリー・シラー(T-AKE-8)」とオランダ海軍フリゲート艦「HNLMSトロンプ(F803)」である。

 そして、二国間作戦の目的は、同盟海軍間の相互運用性を向上させ、自由で開かれたインド太平洋を支援するためと発表されている。

 米国防総省は2024年5月、「航行の自由作戦」に関する2023年度(2022年10月~23年9月)の年次報告書を公表した。

 それによると、米軍は中国や日本、台湾など17か国・地域での過剰な海洋権益の主張29件を対象に作戦を行い、前年度(15か国・地域の22件)から増加させた。

 航行の自由作戦は、国際法に反する過剰な海洋権益を周辺国が主張する海域に、艦船や航空機を意図的に送り込み異議を唱えるものである。

 米国は、定期的に台湾海峡における通行の自由作戦を行っており、常に中国軍の台湾に対する軍事的圧力を警戒監視し牽制する活動を続けている。

 他方、オランダは17世紀に中国や日本との貿易の中継基地として台湾を支配した歴史がある。以来、その結びつきは途切れていない。

 最近では、オランダの議会が、中国が一方的に台湾海峡の現状を変えることを受け入れないよう呼びかける決議案など、台湾に友好的な決議案二つを圧倒的多数で可決し、台湾を強力に支持する立場を明確にしている。

 オランダ海軍のフリゲート艦トロンプはこの後、6月26日から8月2日に予定されている環太平洋合同演習(RIMPAC)2024に参加するためにハワイへ向かっている。

 ロナルド・レーガンは5月16日、巡洋艦「ロバート・スモールズ(C-62)」、駆逐艦「ハワード(DDG-83)」とともに横須賀を出航し、日本における前方展開部隊の空母として最後のインド太平洋哨戒を行い、今年後半に米国に帰還する予定である。

 なお、後任は近代化改修が終わった空母「ジョージ・ワシントン」であり、同空母も日本へ向けて航海を始めている。