土木を専門とする職員がいなくなった自治体が存在する
──全国の自治体が最初にとるべき対策はなんでしょう。
小池:まずは、自らの管轄道路の安全確認を行うべきです。高速道路や国道など、国が管轄する道路は新規投資の際の耐震義務を満たしているところが多いですが、市町村道は老朽化が著しい状態です。
さらに、市町村レベルでは効率性重視の政策のあおりを受け、「土木工事=予算消化のための事業」というレッテルが貼られてしまいました。また、職員数の削減を受けて、全国の多くの自治体で、土木を専門とする職員がいない自治体が存在するといわれています。平常時でかつ既存道路が機能する間は、それでもやっていけますが、災害時には当然対応が遅れることになります。
地元の事情は、地元の人しか分からないことの方が多いものです。土木のノウハウが継承されている地域では「今年の予算で土砂崩れを防ぐためにこの道路のこの部分の工事を優先しよう」というような発想に至ることも多いのですが、専門的知識と地元での経験がなければそうした判断は難しいです。
各自治体特有の道路ノウハウの継承が断絶されてしまっているのは、土木関連の投資をサボってきただけでなく、地方の行政そのものを、短期的に効率化した帰結である可能性があります。まずは自らの地域で危ない場所はないか、総点検する必要があると考えますが、地方の自治体にその体力がなければ国が率先して行うべきでしょう。
──国交省が旗を振って、全国の市町村道を点検することはできないものなのでしょうか。
小池:道路の管轄が、国道=国、県道=県、市町村道=市町村、と分かれているので現実的には難しいでしょう。以下の図を改めて見てください。
国交省がまとめている道路の復旧状況一覧(1月9日時点)です。黒丸に注目して欲しいのですが、「孤立集落(報道等)」とあります。黒丸のエリアの道路網は市町道が中心で、市町がどの道路がどれくらいのダメージを受けているのか、把握できていない可能性があります。
今後、道路の管轄のあり方は大いに議論すべきだと思います。