新幹線の自由席は最終的に全廃されてしまうのか?
いまや新幹線チケットの予約・購入で駅窓口に並ぶ必要はなくなったため、JR東日本は各駅に開設されていたみどりの窓口を2020年前後から一気に縮小・廃止させた。だが、拙速な施策が利用者の混乱を招き、今夏に社会問題化したことは記憶に新しい。
国鉄・JRは常に利用者の利便性を高めることを大義名分として技術開発に力を注いできた。「のぞみ」から自由席が削減されるというニュースは、その技術開発の成果でもある。
ひとまず来春のダイヤ改正で東海道・山陽新幹線を走る「のぞみ」の自由席車は3両から2両へと縮小するが、すでに自由席は役割を終えつつある。自由席には大きな荷物を座席に置くなどして席を占領するように使用している不届きな利用者もいる。そうした事情から指定席よりも自由席の方が空席率は高くなっているとも言われる。
指定席の売り逃し対策として導入された自由席にもかかわらず、自由席の空席率が高くなり、結果的に売り逃しが発生してしまったら本末転倒だろう。こうした時代を取り巻く環境の変化が自由席削減へとつながった。
自由席の削減は実質的な値上げに当たるのでは? との声もあるが、いまや東京―大阪間の移動は東海道・山陽新幹線での移動が一般的になっている。航空機や高速バスなどでも代替できなくはないが、速達性や快適性を考えれば、東海道・山陽新幹線の優位は揺るがない。そのため、いや応なしに指定席増・自由席減を受け入れざるを得ない。
自由席の削減は利用者にとって列車の選択肢を狭めることにもつながり、不自由も生じる。それでも、現在の趨勢を鑑みれば、今後は段階的に自由席を縮小し、最終的には廃止の方向に向かっていくことになるだろう。
【小川 裕夫(おがわ・ひろお)】
フリーランスライター。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経て、フリーランスのライター・カメラマンに転身。各誌で取材・執筆・撮影を担当するほか、「東洋経済オンライン」「デイリー新潮」「NEWSポストセブン」といったネットニュース媒体にも寄稿。また、官邸で実施される内閣総理大臣会見には、史上初のフリーランスカメラマンとして参加。取材テーマは、旧内務省や旧鉄道省、総務省・国土交通省などが所管する地方自治・都市計画・都市開発・鉄道など。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『全国私鉄特急の旅』(平凡社新書)、『封印された東京の謎』(彩図社文庫)、『路面電車の謎』(イースト新書Q)など。共著に『沿線格差』(SB新書)など多数。