新型システムの登場で薄れていった自由席の必要性

「こだま」に導入された自由席は臨時的な措置だったが、1965年6月に定期化した。国鉄は自由席の導入による売り逃し対策を講じるとともに、新幹線用の「マルス102」を導入して空席を減らすことに努めた。

 マルス102は座席・料金・乗車日が機械印字できるようになり、発券業務は飛躍的にスピードアップしたが、発車時刻などの部分は依然として手書き作業が残った。そこで国鉄は同年10月に指定席券類を取り扱う「みどりの窓口」を開設。専用窓口を設けることによって指定席の販売をスムーズにした。

 その後も東海道新幹線の運転本数は増え続け、長編成化も進められていく。1970年には「ひかり」の全列車が16両編成になり、1973年には「こだま」も全列車16両編成化を完了させた。

 運転本数や編成数が増えることで、新幹線そのものの輸送力が増強される。それは当然ながら利用者も増えることを意味する。みどりの窓口にも長蛇の列ができるのではという懸念があったが、それに対応できるように、国鉄はマルスの改良を重ねていた。

 こうした利用者の目には見えないが、国鉄が切磋琢磨したマルスという機器の進化によって、売り逃し問題は次第に解決していった。それに伴い、空席のまま発車する新幹線は減り、自由席の必要性も薄れていった。

 その後、分割民営化の直前となる1985年には「マルス301」が登場。同機は漢字と数字を併用した印字が可能で、裏面は自動改札機にも対応できるように磁気エンコードを付与する機能が付加された。さらにパソコンをベースにした機器になったことから、ソフトウエアを更新することで機能拡張が可能な仕様になっていた。

 そして、利用者が操作する自動券売機にもマルスが導入されるようになった。自動券売機とマルスをネットワークで接続するシステムが開発され、みどりの窓口に並ばなくても新幹線の指定席券が購入できるようになったのだ。

 さらにIT技術の発達やスマホの普及によってマルスの進化はさらに加速。現在はネットでの新幹線チケット予約・購入が普及している。