そんなことまで…密輸団の巧妙な手口
Xの代表は在日中国人。
また2年前まで取締役に名を連ねていた帰化中国人の男性は、「中国系特殊詐欺グループ」のメンバーの1人として、22年に逮捕されている。
そんないわくつきのXについて、公安関係者はこう説明する。
「密輸された金を日本国内で受け取る業者は、“キャッチャー”と呼ばれ、その数は都内だけでも50に上りますが、実際には最大手であるXのほぼ独占状態です。
Xのやり口は、香港などにある旅行会社と手を組んで、その旅行会社から日本への観光客に対して、“これを日本に持って行ったらツアー代を割引するから”と声をかけさせ、指輪やネックレスなどのアクセサリーやベルトのバックル、ブラジャーのカップなどに加工した金に銀メッキの偽装を施したうえで日本に持ち込ませるというもの。大勢の観光客に300g、500gと小分けにした金を持ち込ませるわけです。空港に着いたら、持ち込んだ金はXの従業員がすぐに回収します。観光客は旅行会社からカネを受け取る仕組みで、パスポートで個人情報を確認されているので、金を持ち逃げされる心配もありません」
むしろ、「金の密輸」が儲かると知った観光客が、Xと直接契約し、専門の「運び屋」になるケースも少なくないとのこと。
「運び屋になると、スーツケースに隠しやすいように金粉状になったものを持たされたり、金塊を肛門に入れて運び込んだりと、密輸する金の量が一気に増えます。現在、運び屋の報酬は金1kgにつき2万8000香港ドル(およそ54万円)とされています。
一方、Xが観光客から密輸した金を購入するときの基準は、大手貴金属販売会社が公表している店頭買取価格(税込み)です。その価格は現在、1gあたりで大体1万4000円で、そのうち消費税分に相当するのはおよそ1200円。Xは消費税分の半額、600円を引いた1万3400円を最初に金を仕入れた旅行会社に支払います。即ち、1kgなら60万円が旅行会社の儲けです」