ロシアは何が足りないのか?ロシアを蝕む人手不足の本質
基本的に、ロシアは急速に少子高齢化が進んでいる国である。そしてロシアは、不足する労働力を中央アジア諸国からの移民で補っている。そうした経済で雇用が堅調に増えていれば、人手不足には深刻なものとなる。そこで、まずはロシアの雇用者数の前年差増減数を産業別内訳に確認してみたい(図表1)。
【図表1 雇用者の産業別内訳(前年差増減数、万人)】
まず、各産業をモノ生産関連(農林水産業と鉱工業)とサービス生産関連、戦争関連(行政・国防)、その他に分類し直してそれぞれの前年差を確認すると、2024年もロシアの雇用者数は増えているが、特にモノ生産関連での雇用が増えていることが分かる。軍需品の増産圧力や輸入品の代替生産圧力を受けて、製造業で雇用が増えたのだろう。
一方で、サービス生産関連に関しては、増加幅が縮小しているという特徴がある。このサービス生産関連の内訳をブレイクダウンすると、顕著な動きとして、卸売小売業・自動車修理業・宿泊飲食業で雇用者数が減少している様子が窺い知れる(図表2)。この様子は、生活に密着したサービス業で人手不足が深刻化している可能性を窺わせる。
【図表2 サービス関連産業の産業別内訳(前年差増減数、万人)】
実際、SNSでは、都市部の生活関連サービス業で人手不足が進んだことを指摘する声が多い。要するに、小売店や飲食店での人手不足が顕著なのだろう。マクロ的には、ヒトが有限である中で、軍需や輸入品の代替生産のヒトを投入するため、生活関連サービスを生産するために投入すべきヒトを犠牲にしているという理解が成り立つ。
それに、2024年以降は戦争関連(行政・国防)での雇用の減少が目立つ。戦争の長期化を受けてロシアは慢性的な兵士不足に陥っており、第三国から派兵を受けていることが確認されている。シリアにおけるアサド政権の崩壊は、ウクライナとの戦争に注力するあまりにロシアが兵士不足に陥っていることと無関係ではないだろう。