関係国の思惑

 イスラエルとしては、ガザ地区でのハマスとの戦闘、イランへの対応に集中したいのである。武器の供給が途絶えないようにする、また、兵士の休息などのために、ヒズボラとの戦闘を中止することは合理的である。

11月26日、ヒズボラとの停戦について声明を発表するイスラエルのネタニヤフ首相(提供:Israeli Government Press Office/AP/アフロ)
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 ネタニヤフ首相は、「ヒズボラが停戦合意に違反した場合には、イスラエルは攻撃する」と明言した。このイスラエルの反撃権については、停戦合意には含まれていないが、アメリカがイスラエルに対して保証したと考えられている。

 ヒズボラにとっては、指導者が殺害され、兵員の死傷者が増え、武器も払底してきたために、停戦は勢力再構築のためにありがたい。ヒズボラは、イスラエルとの戦いに勝利したという声明を出した。

今年9月、イスラエルによる空爆によって亡くなったヒズボラの指導者、ハッサン・ナスララ師(写真:ロイター/アフロ)
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 レバノン政府は、強力な武装勢力ヒズボラによって混乱をもたらされた国政の主導権を握り、国際社会の信任を得るためには停戦が望ましい。停戦監視を実行することが、そのためにも役に立つ。ミカティ暫定首相は26日、停戦合意を歓迎すると述べた。

レバノンのミカティ暫定首相(提供:Dalati Nohra/ロイター/アフロ)
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 アメリカのバイデンにとっては、政権最後の業績として中東和平への第一歩を踏み出したことを誇り、「これは、恒久的な敵対行為の停止を意図したものだ」として、「イスラエルとヒズボラの破滅的な戦いに終止符を打つアメリカの提案を受け入れたことを嬉しく思う」と述べた。「イスラエルには国際法に沿った自衛権がある」と説明したが、次期大統領のトランプの中東政策が不透明な中で、既成事実を積み重ねようという思惑があったようである。

バイデン大統領(写真:Gripas Yuri/ABACA/共同通信イメージズ)
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 トランプも、今回の停戦を歓迎しているという。60日間という停戦期間はトランプ政権の発足も念頭に置いているため、今回の停戦が、来年以降のアメリカの中東政策にどのような影響を及ぼすかは、まだ読めない。

 いずれにしても、政権移行期に大きな政策変更を行うのが好ましいのかどうか、疑問の残るところである。

 前回の本コラムでも述べたように、バイデン政権は、11月17日、ウクライナに長距離ミサイルの使用を許可したが、それは戦争を拡大させることに繋がる。就任したら24時間以内にウクライナ戦争を終わらせるというトランプに対して、どのような牽制球になるのだろうか。