(写真:REX/アフロ)

 米アップルは最近、投資家に対し、同社の将来製品・サービスが現在のような高い利益率を維持できない恐れがあると警告した。AI(人工知能)時代における、製品やサービスの移り変わりに備え、法的な保護条項を書類に盛り込んだものとみられる。

年次報告書に新たな「リスク要因」追加

 同社は最新の年次報告書(FORM 10-K)において、同社事業が直面する「リスク要因」の項目に、成長と利益率に関する警告文を追加した。

 「競争力を維持し、需要を喚起するために、当社は製品及びサービスの頻繁な市場投入と移行を行う必要がある」という見出しの下には次のようにある。

 「今後登場する当社の新しい製品、サービス、テクノロジーは、既存の製品やサービスに取って代わり、収益と利益率を低下させる恐れがある。これは、当社の事業、業績、財務状況に重大な悪影響を及ぼす恐れがある。当社が将来の製品やサービスの導入と移行を成功できる保証はない」

 英フィナンシャル・タイムズ(FT)によれば、アップルはこれまで年次報告書において、競合や為替変動、サプライチェーンの問題など、様々な要因が利益率に「変動をもたらし、下押し圧力をかける」可能性があると、繰り返し警告してきた。

 過去の数年間の年次報告書では、「新製品の導入が『より高いコスト構造』を伴う可能性がある」と示唆していた。しかし将来製品・サービスの財務状況について、これほど直接的に言及したことは今回が初めてだという。

 今回の報告書では、AI機能による安全性のリスクについても言及している。「AIなどの新しくて複雑なテクノロジーの導入は、ユーザーを有害で不正確なコンテンツにさらす恐れがある。当社が提供するハードウエア、ソフトウエア、サービスの全ての問題や欠陥を検出し、修正できる保証はない」といった具合だ。

高利益もたらすiPhoneとサービス事業

 同社のスマートフォン事業やサービス事業は利益率が高い。2024年7~9月期におけるアップル製品・サービス全体の粗利益率は46.2%と、過去最高を更新した。

 一方、サービス事業の粗利益率はそれを大きく上回る74%である。サービス部門は、アプリ・音楽・動画配信などのコンテンツ・サブスクリプションサービスや、広告枠販売、米グーグルからの検索ライセンス収入、クラウドのサブスクサービス「iCloud」、デバイス保証サービス「AppleCare」、決済サービス「Apple Pay」など幅広い事業を展開している。

 その24年7~9月期における売上高は、249億7200万ドル(約3兆8400億円)で、過去最高を更新した。8四半期連続で200億ドルを超えた。