同社のルカ・マエストリCFO(最高財務責任者)は決算説明会で「7~9月期のサービス収入は250億ドル弱となり、年換算ベースで1000億ドル(約15兆3900億円)に達した。わずか数年前を振り返ると、この成長は驚異的だ」とコメントした。
しかし、一部のアナリストは懐疑的だ。生成AIシステム「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」など、今後アップルが世界展開していく新しいサービスはiPhoneや既存サービスと同等の利益率を実現できるのだろうか、と疑問視している。
生成AIでどう収益を上げるのか
近年、成長が鈍化したスマホ市場では低価格端末を販売する競合他社との競争が激化している。それでも多くの顧客が高価格のiPhoneを選んでいる。その理由の1つが、iPhoneで利用できる豊富な機能やサービスとみられている。こうした状況でアップルが投入したのが、Apple Intelligenceである。Apple Intelligenceは無料だが、最新iPhoneを含む一部モデルでのみ利用可能となっている。
米ディープウォーター・アセット・マネジメントのマネージングパートナー、ジーン・マンスター氏は、「アップルは生成AIからどのように収益を上げるのか、いまだ見いだしていない」と指摘する。Apple Intelligenceのハードウエア販売促進以外の活用法を考える必要があるというのだ。
これまで利用者は、追加料金を払って豊富なアプリを楽しんできた。今後、iPhone利用の主な目的が、無料のApple Intelligenceに移れば、サービス収入が減少することになる。また、AI機能の開発費用がかさめば、粗利益率は低下する。
既存サービスにも不安材料
加えて、アプリ手数料や検索ライセンスといった既存のサービス事業にも影響が及ぶ可能性がある。
欧州連合(EU)は24年3月、巨大テクノロジー企業を対象としたデジタル市場法(DMA)の本格運用を開始した。これにより今後、欧州でアップルのアプリ手数料収入が減少する恐れがある。
24年8月、米国の反トラスト法(独占禁止法)訴訟でグーグルが敗訴した。グーグルは、アップルに手数料を支払ってiPhoneに自社の検索サービスを標準搭載させる契約を結んでいる。米司法省はこれが違法だとして、訴訟を提起していた。この判決により、今後、アップルがグーグルから得ている数十億ドル(数千億円)のライセンス収入が断たれる可能性がある。