日本への影響のメカニズムと気象庁の今冬予想

 エルニーニョ・ラニーニャが発生すると、日本はどのような影響を受けるのでしょうか。まず、今冬の発生が予想されているラニーニャについてですが、ラニーニャが発生すると、暖水域が西へ集中することから、平常時に比べてインドネシア近辺の海水温が上がり、水蒸気の上昇が強まります。これにより周辺気圧が平常時より低下するため、日本列島南東の太平洋高気圧が強まって日本列島付近にまで張り出し、日本の夏は暑くなります。そして、冬にはシベリア高気圧の勢いが強まり、西高東低の気圧配置によって寒くなるのです。

図3:ラニーニャ現象の冬季の天候への影響
インドネシア近海で海水温が上昇し、海水が盛んに蒸発して低気圧の状態になるため、シベリア高気圧の勢力が強まり、日本は西高東低の冬型気圧配置になり寒くなる 出典:気象庁ホームページ

 エルニーニョが発生した場合は、西の暖水域が東へ伸びることにより、ラニーニャとは反対にインドネシア近海の海水温が平常時より下がり、低気圧の発生が弱まります。そのため太平洋高気圧やシベリア高気圧の張り出しが弱まり、日本は冷夏と暖冬に見舞われます。

 気象庁は毎月1回「エルニーニョ監視速報」として、エルニーニョとラニーニャの実況と見通しを発表しています。今年の11月11日に発表された「エルニーニョ監視速報」によると、10月現在では「エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られるが、ラニーニャ現象時の特徴が明瞭になりつつある」としています。そして、今後ラニーニャ現象と認められる可能性は40%、平常の状態が続く可能性が60%としています。

 つまり、この予報を信じれば、ラニーニャの傾向はあるもののさほどではなく、今冬の気温は平年並みと判断できます。ただし、昨年は暖冬だったので、それよりは寒いというところでしょう。

 もっとも、複雑系である気象の予想は、長期予想になればなるほどスーパーコンピュータをもってしても的中確率が下がります。なので、ラニーニャが発生して今冬が厳しい寒さになる可能性もそう低くはないでしょう。

(編集協力:春燈社 小西眞由美)