陽気な藤原宣孝と不器用すぎる藤原為時
紫式部が成人の儀式を無事に終えて、満足そうな藤原宣孝は、こんな軽口を叩いている。
「これでよし! そなたもこれで一人前! 婿もとれるし、子も産める。あー、めでたい!めでたい! わっはっはっは」
いささか“陽キャ”すぎる宣孝は一体、何者なのか。そう疑問に思った人もいるかもしれない。宣孝は為時の親戚で、紫式部にとっては「又従兄妹」(またいとこ)にあたる。
為時と宣孝は、花山天皇の即位後に同僚として働くことになるが、ドラマでは「為時と宣孝には昔からつながりがあった」という設定になっている。第1回でも、不器用でなかなか職を得られない為時のもとを、宣孝がたびたび訪ねては、任官のためのアドバイスをする様子が描かれた。
紫式部の父である為時は、漢学者として確かな素養がありながらも、官職になかなか就けなかった。マジメすぎるがゆえにうまく立ち回れなかったのは、どうも本当らしい。
寛弘7(1010)年正月2日、藤原道長の邸宅で宴が開催。為時も招かれたものの、終わるや否や、さっさと席を立って帰ってしまったという。その姿を見た道長から「お前のお父さんはひねくれている」と言われたと、紫式部による『紫式部日記』に記載されている。
やや社会性に欠けた為時が、東宮(のちの花山天皇)の御読書始において、副侍読を務めるという機会を得たのは、誰か親身になって就職のアドバイスをしてくれる人がいたからではないか──。そんな発想から、『光る君へ』では、藤原宣孝が「世渡り上手で世話焼きなキャラクター」として描かれている。二人の凸凹コンビは、これからも物語を動かしていくことだろう。