「すれ違い」は恋愛モノに不可欠な展開だが…
成人の儀式のシーンに戻ると、満足げな藤原宣孝に対して、紫式部の父・為時は「宣孝殿、かたじけのうござった」と神妙に頭を下げている。ここも少し説明が必要だろう。
第2回を録画している人は、吉高由里子が顔のアップになる前のシーンをもう一度、見ていただきたい。宣孝が紫式部の正面でかがんで、腰の紐をぎゅっと結んでいることがわかるだろう。
これは「腰結」(こしゆい)といって、徳が高くて周囲から尊敬されている者が、その役を担う。前回の大河『どうする家康』で主役となった徳川家康は、今川家の人質時代に成人を迎えたため、今川義元が家康の後見人として「烏帽子親」(武家社会で、元服する者に烏帽子をかぶらせ成人名を与える役の者)となった。これと同じ役目を宣孝は担ったことになる。
為時からお礼を言われた宣孝は「大事なことなので2回言います」とばかりに、再びこう口にしている。
「よい婿をもらって、この家を盛り立ててもらわねばのう」
さて、今回のドラマでは「紫式部と藤原道長の再会」が、ストーリーの軸となっている。道長の足の傷をみて「三郎?」と気づく紫式部。二人はその後も会おうとするが、なかなか巡り会えない。
もどかしい思いを抱きながら、第2回を見終えた視聴者も多かったようだ。SNSでは、こんな声も挙がっていた。前述したように「まひろ」は紫式部、「三郎」は藤原道長のことだ。
「どう足掻いてもまひろちゃんと三郎の関係がラブいんだけど、史実で絶対に結ばれないふたりなんだよなって心臓ギュッてなる…」
「まひろと三郎のカプ厨になりつつあるんですが、歴史上紫式部と藤原道長は結ばれない運命じゃないですか…どうすればいいですか」
「まひろと道長結ばれないのつらっ 面白すぎて来週を待てない」
そう、これだけ運命的な出会いをにおわせながらも、二人が夫婦として結ばれることはない。それどころか、紫式部は成人式で「婿もとれるし、子も産める。あー、めでたい! めでたい! わっはっはっは」と一人騒いでいた、藤原宣孝と結婚することになるのだ……。
紫式部はもちろん、宣孝もそんな未来が待ち受けているとは、この時点では夢にも思わなかっただろう。どこがどうなって、そういうことになるのか? これもまた、先の大きなあらすじは決められている、歴史ドラマならではの楽しみではないだろうか。