OECD加盟も目指すタイとインドネシア

 BRICSに加盟を申請したASEAN3カ国のうち、タイとインドネシアは、先進国クラブとして知られる経済協力開発機構(OECD)への加盟も目指している。つまり、タイとインドネシアは、いたずらに中国やロシアに接近しているわけではない点が重要である。先進国との経済関係も引き続き重視しているし、政治関係も重視している。

 そもそもBRICSは、確たる国際機構であるとは言えない。これから国際機構の道を歩むとしても、ロシアがそのイニシアチブを握る可能性は極めて低い。中国が握ろうとした場合、中国と反目する国がBRICSから距離を置くだろう。BRICSは、呉越同舟であり同床異夢である新興国の緩いつながりに過ぎないため、過大な評価は禁物と考える。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。土田氏の新著『基軸通貨』では、こうした新興国におけるドル離れや脱ドル化の取り組みの特徴や問題点に関して深く議論していますので、興味がある方はぜひどうぞ。

【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部副主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)、『基軸通貨: ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)がある。