トランプで経済が好転する?

 有権者の大半が、こうしたトランプ氏の「恐れているもの」の排除に共鳴したのである。

 この8項目に加え、もう一つ、トランプ氏に票を入れた有権者の最大関心事は、インフレ、物価高、雇用だった。

 平たく言えば、米国市民にとっては毎日乗る車のガソリンの価格、牛乳、卵の値段、薬代、医者に払う診療代だ。

「民主主義の危機」とか、「米国憲法を守る」などといった事例よりも切実な話だ。

 有権者は、世論調査の問いに「トランプ氏が大統領になれば、経済は良くなる」と答えていた。

 経済界のリーダーたちも口裏を合わせたようにそう言い続けて、ヒルビリー有権者たちは、自分たちの考えは正しかったと再確認していた。

 客観的データではバイデン・ハリス政権下で経済は改善されたことが立証されているにもかかわらず、有権者は「経済はトランプ」と信じ込んでいた。

 一般の市民たちに関心の薄い財政赤字では、超党派のシンクタンク「Committee for Responsible Federal Budget=CRFB」が一つの試算を出していた。

「トランプ氏が大統領に返り咲けば、大企業・富裕層に対する減税策の恒久化5兆3500億ドルなどで、今後1年間で財政赤字は7兆7500億ドルとなる」

「ハリス政権なら約半分の3兆9500億ドルだ」

The Fiscal Impact of the Harris and Trump Campaign Plans-Mon, Committee for a Responsible Federal Budget 

 トランプ氏の再登板で米国の内政、外交がどうなるのか、識者たちは茫然としている。

 コンパスなき新たな航海に船出する米国に、高学歴エリートたちは言葉を失っている。