事前に警察当局から電話などで警告や尋問

 北京と上海の二大都市では大学教員は全員出勤で学生指導にあたるよう指示され、表通りや地下鉄駅には重点的に警官が配置された。特に2022年11月26日に「白紙革命」の発火点の一つとなった抗議集会が行われた上海ウルムチ路から巨鹿路にかけての私服警官の多さは驚くほどだった。

 10月25日以前、すでに上海の若者たちは警察当局から様々な警告や尋問を電話などで受けていることをSNSで明かしている。警察は「向精神薬などドラッグを購入していないか」「週末に街頭での集会活動に参加するつもりか」など問いただしたのだという。

ハロウィン前に警戒を詰める警察当局=10月26日、上海(写真:ロイター/アフロ)

 またサイバーポリスも微博などSNSでの発信に対する監視を強化し、その監視の目はタオバオなど有名Eコマースサイトなどのハロウィンコスプレ用品、パーティ用品にも及んでいたらしい。

 25日の夜ごろから、上海の巨鹿路周辺でコスプレ姿の若者が姿を見せ始めたが、警官が目ざとく見つけては即座にコスプレ衣装を脱ぐように命令。すぐに衣装を脱がないと派出所に連行され、身分証、住所、電話番号の提示を求められてひとしきり説教された後、解放されたのだという。だが、それでも、多くの若者がゲリラ式の方法で、ハロウィンコスプレを続けた。

 SNSなどで拡散されている動画をみると、ある建設作業員に扮して道路標識を掲げているコスプレがあった。これは2022年に起きた上海市ウルムチ中路の白紙革命抗議デモのとき、ウルムチ中路の道路標識が撤去されたことを揶揄しているようだったが、今やその道路名もネットの検閲対象になっている。

 ほかに仏陀のコスプレをした男性や、アメリカのセレブモデルのキム・カーダシアンのコスプレ女性、中国の精神病院患者(収容所)の番号入り病服姿の男性が警察に連行されたり、ドナルド・トランプのお面をかぶった男性が警察に追いかけられて逃げていたりする様子の動画があった。

 もちろん、政治性のまったくない普通の仮装も取り締まられている。ある動画では漢服コスプレの女性が「私は愛国者よ、これは日本のキャラクターじゃない」と警察の連行に抵抗していた。

 26日は中山公園で数千人のコスプレの若者が集結し、「おれたちは自由がほしいんだ」「好きな衣装を着る権利もないのか」と叫んでいたが、すぐに警官たちに連行されたり、追い払われたりした。27日には中山公園のオフィシャルアカウントが公園を一時閉鎖すると発表。すると今度は復興公園で若者たちが集まり、さらには静安寺地下鉄のあたりまでコスプレ姿の人たちで埋め尽くされた。

 警官がコスプレイヤーたちを連行しにやってくると、コスプレの若者たちが警官を取り囲む場面もあった。コスプレの若者たちと対峙しもみ合いになる警官も、また警官のコスプレをしているかのように見えたし、実際、警官のコスプレをしている人もいたようだ。