習近平が恐れた「白紙革命」の再演

 こうした雰囲気の中、警官隊は異様に神経質になり、ショッピングモールに飾った人形までも注意深く調べたりし、それをコスプレ群衆がはやし立てたりしたのだった。

 こうした警官隊とコスプレ若者の奇妙な緊張感ある掛け合いは、それ自体が政治性を帯びたパフォーマンスに見えて海外メディアも「政治的ハロウィン」と報じた。こうした緊張感あふれる中国式政治的ハロウィンは上海だけでなく広東省広州や浙江省杭州、湖北省武漢でも出現していた。

昨年の上海のハロウィン(写真:VCG/アフロ)

 当局は全国の大学を通じて、学生に西側のハロウィンパーティーに参加するな、コスプレをするなと通達を出した。遊園地なども、11月1日までコスプレ客を入園させないと宣言していた。

 習近平が恐れたのは、「打倒習近平、打倒共産党」のシュプレヒコールが起きた2022年の白紙革命の再演だ。ボイスオブアメリカによれば、習近平はこの白紙革命後、上海市だけで3000のAIによる顔識別監視カメラを新たに導入した。

 また全国で「投資に失敗した人物」「生活に絶望した人物」「人間関係を失った人物」「心理的均衡を失った人物」「精神失調の人物」を「五失人員」と分類して、新たな治安維持対象グループとみなして監視を強化。このほか、若者の失業率統計の公表を中止し、大学や専門学校には若者を卒業させずに大学院に進学させるよう指示し、若者の不満を抑え込もうとした。

 もう一つ、習近平政権がハロウィンを恐れる理由として、ハロウィンウィークの最中の10月27日が昨年不審死した李克強前総理の命日であることを指摘する声もある。