いまこそ、宗教の垣根を超えた相互理解を
大分県だけではなく、日本各地では土葬に対するアレルギーは強い。水質汚染や風評被害の心配が解消されたとしても、土葬という生々しい埋葬法が、火葬大国の日本では心理的に受け入れ難いものになっているのだ。火葬場の新設が困難であるのと似ている。
自覚さんだけではなく、各地のムスリムの土葬墓地の整備を主導しているのは仏教寺院である。
山梨県甲州市塩山にある「イスラム霊園」は、曹洞宗の文殊院(もんじゅいん)という寺院境内にある。先代住職がムスリムに理解があり、半世紀前にムスリム専用墓地を整備した。
また、2022(令和4)年に入って土葬のエリアを設けたのが、京都市南山城村(みなみやましろむら)の高麗寺だ。高麗寺は山間部に5万坪の敷地を有する禅宗寺院だ。その一角に土葬墓地がある。ムスリム以外にもキリスト教徒や儒教など、土葬率の高い宗教も受け入れている。同一区画に同一宗教の人のみを埋葬している。
奈良県や三重県にも近いこの地域の埋葬法といえば、15年ほど前までは土葬がほぼすべてだった。そのため土葬墓地整備に関しても、地域の理解が得られやすかったという。
土葬墓地の設置を巡って紆余曲折がある中、宗教を超えてキリスト教、仏教が連携しムスリムの人を助けようとする精神に、救われた気がした。
(編集部注:10月17日、2024年8月の町長選で当選した安部徹也・日出町長がイスラム教徒の団体と面会し、土葬墓地建設のための町有地売却について撤回する考えを伝えた)