北朝鮮では棺桶も自分で用意しなければならない。写真はイメージ(写真:ロイター/アフロ)

 葬墓文化とは、遺体を土に埋める土葬や火で燃やす火葬をはじめとした葬儀の風習だ。韓国と北朝鮮は、歴史的に土葬が好まれてきたが、「国土の墓地化」が急速に進んだことから火葬文化が広がっている。北朝鮮の葬墓文化を見てみよう。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 北朝鮮では、亡くなった人が出ると死者や喪主の職場に通知し、居住地の人民班を通じて近隣に知らせる。こうして職場や人民班から葬式を執り行う手助けを受けることができるようになる。北朝鮮には葬儀場や葬儀専門業者が存在しないため、支援を得られる職場や人民班に知らせることが重要である。

 次に、近隣の病院や診療所で死亡診断書を発給してもらい、役場と保安署に届け出る。そこで、住民登録に死亡した日を登録すると、葬儀を執り行うことができるようになる。

 続いて、喪主と死者や喪主の職場が、土葬か火葬かなど埋葬方法を協議する。平壌は火葬、地方は土葬が多い。平壌には市民のための火葬場が国家レベルで建設されているが、地方はいまだ火葬施設が整っていないからである。大まかに言って、北朝鮮全体で土葬と火葬の割合は7対3から8対2だ。

 土葬すると決まれば、死者や喪主の職場が遺体を埋葬する場所を調べる。北朝鮮の人々は風水的に見て問題ない墓に埋葬しないと子孫の人生がうまくいかないと信じているため、墓所の選択は極めて重要だ。ただ、勝手に決められるものではなく、国家が定めた共同墓地の中から埋葬場所を選ばなければならない。埋葬のための山や林野を個人が所有できないことによる。

朝鮮戦争の犠牲者を埋葬する墓地の竣工式に出席した金正恩朝鮮労働党総書記。平壌では火葬が増えている(写真:ロイター/アフロ)