カブールの空港でアフガンの人々の退避を支援する米軍(提供:Staff Sgt. Victor Mancilla/U.S. Marine Corps/ロイター/アフロ)

 米軍が撤退を決めたアフガニスタンでは、米国の予想をはるかに超える勢いでイスラム勢力タリバンが主要都市を次々と制圧、ついには首都カブールも掌握した。国際社会が支えてきたガニ大統領は国外へ脱出、大統領府を明け渡した。

 2001年からのアフガニスタン戦争では数多くの兵士や民間人の死者を出したが、この20年は何だったのか。『池上彰の君と考える戦争のない未来(世界をカエル10代からの羅針盤)』(理論社)を上梓した池上彰氏に話を聞いた。(聞き手:長野光 シード・プランニング研究員)

※記事の最後に池上彰さんの動画インタビューがありますので是非ご覧ください。

──先日、アフガニスタンをタリバンが掌握しました。長い戦闘の結果、米国はアフガニスタンにおいて何を成し遂げたのだろうという疑問が湧きます。現状どのように見ていらっしゃいますか。

池上彰氏(以下、池上):そもそもアフガニスタン政府の頭越しにタリバンと交渉したのはトランプ政権時代の米国で、米国は撤退すると約束をしていた。だから、タリバンが奪還しにきたということですよね。

 米国はオバマ大統領の時、「米国はもう世界の警察官ではない」と言い切った。トランプ大統領の時は既に、中東への関与はなるべくやめていくという流れができていました。共和党でも民主党でもそれは変わらない。シェールオイルを大量に産出する米国は世界最大の産油国です。米国にとって、中東はもう大事なところではありません。米国は今後も中東に配備している米軍を撤退させていくでしょう。

──アフガニスタンからの撤退には、中国に対して兵力を動かしていかなければいけないという理由もあるのではないでしょうか。

池上:“パパブッシュ(ジョージ・H・W・ブッシュ大統領)”が大統領の頃まで米軍の国際戦略は「2.5」、つまりアジアと中東で同時に大規模な戦争が起きても、米軍はその両方で戦闘することができる、さらにそれ以外の小規模な紛争にも関与することができるという戦略でした。ところが、今は「2」も維持できず、「1.5」が維持できるかどうかという状態です。そうなると中国の脅威を考えた上で部隊を移動させなければいけない、その一環だと思います。

──アフガニスタンは今後どうなるでしょうか。

池上:タリバンは20年前にあまりに過酷なことをやって、国際的に批判を受けました。これからタリバン政権がアフガニスタンを発展させようとするなら、国際社会から孤立してはいけない、ということになる。すると、「女性の権利をそれなりに認めなければいけない」と指導層は考えてはいるでしょう。ただ、現場の人間がそれを守るかどうかは現時点では分からないですね。

──沖縄の米軍基地にいる米軍の増強はありますか。