「成約価格」ではなく「売り出し価格」が基になっているケースが多い

 相場を知る上で重要なのは、実際に取引が成立している金額の把握だ。

 通常、インターネットなどの相場については、成約価格ではなく、売り出し価格が基になっていることが多いので、それが相場の実態とは限らない。契約が成立して実際に取引されている価格は、売り出し価格より数パーセント程度低いことが多いので、売り出し価格が相場だと思ってしまうと、値付けを誤ってしまう原因となる。

 成約価格を表示しているサイトであれば、その旨が必ず表記されているので、それがない場合には、まず売り出し価格と考えていいだろう。その場合には、相場は、それより少し低いものと考えるべきだろう。

 実際、不動産会社から得た情報については、【グラフ4】にあるように「同じマンションの成約情報」(37.7%)、「周辺のマンション情報」(35.9%)、「周辺の類似物件の成約情報」(33.3%)などが上位に挙がっている。あくまでも同じマンション内、周辺マンションにおける成約情報が重要となるわけだ。


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 不動産には全く同じものは存在しない。同じマンションでも、何階なのかという立体的位置、どの向きかという平面的位置によって評価は異なるし、もちろん専有面積や間取りなどによっても違ってくる。

 原則的に上層階になるほど、高くなり、物件にもよるが人気エリアだと最上階とその下の階では、何百万円もの差がつくこともある。また、南向きや角部屋が北向きや中住戸より数パーセント程度高くなることが多い。

 ただし、都心で夜景などが見えるマンションだと、都心のビル街が北にある場合、北向きの方が高く査定されることもある。東京タワー、東京スカイツリー、レインボーブリッジなどのランドマークについても同様だ。そのあたりは物件によって条件が異なるので、そんな点もきちんと説明してくれるような会社や担当者であれば信頼していいだろう。

 そうした点を細かく知る上でも、実績が豊富な不動産会社を選ぶことが大切な要件になる。

 不動産の売却や購入を成功させるためには、信頼のおける不動産会社選びが何より大切で、そこから「不動産の相場」に関する正しい情報を得て、的確かつ迅速に対応する必要がある。なかなか大変な作業だが、じっくりと時間をかけて見極めていけば満足のいく結果になるはずだ。

【山下和之(やました・かずゆき)】
住宅ジャーナリスト。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材、原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入絶対成功させる完全ガイド2022─2023』(講談社ムック)などの著書がある。