焼却炉内の水銀濃度は厳しくチェックされている
「微量の水銀が含まれているボタン電池程度なら、普通ゴミにちょっと混ざるくらい大丈夫なんじゃないの?」と思う人もいるかも知れない。しかし、焼却炉内の水銀濃度は厳しくチェックされており、そうはいかない。水銀濃度が排出基準を超えると焼却炉を停止し、設備を清掃したり汚れた部品を交換したりする必要が生じてしまう。「少しならいいか」が積み重なり排出基準を超えてしまうと、こうした大変な事態を招く可能性があるのだ。
焼却炉が停止すると復旧に莫大なお金がかかることも
実際に水銀濃度の上昇によって、焼却炉を停止した例は数多くある。東京都23区だけでも、2024年3月から4月にかけて杉並区の焼却炉が停止。2023年には中央区、2022年にも江東区の焼却炉がそれぞれ停止している。職員による作業で外注費用がかからずに復旧したケースもあるが、復旧に大きなコストがかかる場合もある。
たとえば、2016年に中央区の焼却炉が停止した際にかかった費用は約1200万円。2014年には同じ中央区の焼却炉が約4カ月間停止し、約1億9600万円の復旧費用がかかっている。一人ひとりが正しくゴミを出していれば防げたことに、これだけの税金が使われていると考えると分別の大切さがよくわかるのではないだろうか。
もちろん水銀を含むゴミを正しく回収することは、お金の面以上に健康被害や環境汚染の観点から非常に重要だ。近頃は体温計や血圧計などはデジタルに置き換わるなど、水銀を使用した製品は少なくなってきている。このまま水銀フリーを進めつつ、うっかり普通ゴミに混入させてしまわないように今一度ゴミの出し方を見直したい。