ドローン攻撃で頭を吹き飛ばされた女性も
アポなどは一切なかったが、避難者の方々に話を聞きたいと聖職者に頼むと、快く迎え入れてくれた。
ちょうど支援物資を運ぶトラックが着いたところで、たくさんの人が服を選んでいた。これから寒くなってくるので、長袖が必要なのだ。
その中で、ウクライナと国境を接しているチョートキノ村から逃げてきた2人の女性、ラーヤさんとガリーナさんに話を聞いた。
彼女たちによると、チョートキノ村は今年3月のロシア大統領選挙の際にウクライナ軍から激しい攻撃に遭っていた。
さらに今年の6月頃から、無差別攻撃は激しさを増した。
ラーヤさんの家は国境から100メートルしか離れていない。8月7日、ウクライナ軍侵攻のタイミングで、近所の人と一緒に車で避難した。
比較的スピーディーに避難できたのは、夏から何回も、短期間の避難を経験していたからだ。
ラーヤさんは、すぐに家に帰るつもりだった、と強調した。
「ガスも電気も水道も何もありませんでした。でも家を捨てる気は一切なく、今回も、いつもの避難のつもりでした」
「2~3日か、長くても1週間くらいで攻撃が収まったら、自宅に戻る予定でした。だから小さなバッグと、身分証だけ持って、文字通り車に飛び乗ったのです。まさかこんなことになるなんて」
ガリーナさんの夫は、クルスク侵攻が始まるおよそ1か月前、7月12日に、自転車に乗っていたところを追跡型ドローンに追いかけられた。
逃げ切れないと思い、飛び降りて木イチゴの茂みに身を隠した。
その瞬間、ドローンから爆発物が落とされたが、たまたまサクランボの木に引っかかり、わずかに離れたところで爆発した。
夫は、背中を負傷し、衝撃で歯まで抜けたが、命は助かった。ガリーナさんは言う。
「村は、花びら(空中散布式の対人地雷)とドローンでいっぱいです。道で車を待っているところにドローンが来て、頭を吹っ飛ばされた女性もいましたから、うちの夫は幸運でした」
「地雷を除去するまで、どれだけの時間がかかることか。村に戻れる状況ではないと分かっていますが、私たちの気持ちはまだ、村にあります」
2人とも、紛争がエスカレートするまで、国境の存在を強く意識することはなかった。
ソ連が崩壊し国境が誕生した時、この2人の共通の知人の家は、文字通りロシアとウクライナをまたいでいた。
「居間がロシアで、台所がウクライナだったんです。このことは村の皆が知っています。そもそも国境が引かれた時、誰も、そこに何があるか見に来ませんでした」