ウズベキスタンでは柔道が最も人気のあるスポーツだ(写真はすべて筆者撮影)

新大統領就任で“鎖国”を解除

 ソ連崩壊後、鎖国状態だった中央アジアの国、ウズベキスタン。

 27年間たった一人の大統領が君臨し、外国に出るだけで出国ビザが必要、民間企業も存在しない、と時代を逆流していた。

 しかし、2016年に新大統領が誕生してから方針転換し、あらゆる分野で外国との交流が盛んになった。スポーツも例外ではない。

 1月18日、ウズベキスタンのスルハンダリ州で少年柔道教室を行った柔道家の浅井信幸さんは、ウズベキスタンに来た理由について「呼ばれれば世界中どこへでも行く。兄弟とも呼べる友人たちが誘ってくれたから」と話している。

 これまでも青年海外協力隊を通じての柔道家の派遣はあったが、関係者は「民間スポンサーのイベントは、スルハンダリでは初めて」と話す。

 浅井さんは山下泰裕・日本オリンピック委員会会長のパーソナルアシスタントを務めており、「柔道・友情・平和」をモットーに山下さんから贈られた柔道着を持参して指導を行った。

「なぜ首都タシケントでなくスルハンダリなのか?と思ったが、来てみてその理由が分かった。柔道を始めたばかりの子でも、指導した時の反応やセンスがとても良い」と言う。

 2024年7月に行われるパリ五輪に内定している選手のうち、ほとんどがスルハンダリの出身である。

 2019年世界柔道選手権(東京)60キロ級の銀メダリストで、2021年の東京五輪を含め、20回以上の来日経験があるシャラフディン・ルトフィラエフさんは、スルハンダリで生まれ育ち、現在は指導にあたっている。

 ルトフィラエフさんはこう話す。

「柔道人気はウズベキスタンの伝統格闘技クラッシュの影響でしょう。寝技がないなどの違いはあるが、クラッシュと柔道はかなり似ています」

「スルハンダリの結婚式では、余興として必ずクラッシュが行われます。最近、国からのスポーツ予算、特に子供向けが大幅に増え、この州ではそれを柔道の発展に使っています」